第6話
「今日も今日とて絶好のお昼ご飯日和だね。約束通り、パン買ってきてないよね?」
「よろしい。じゃあほら、ばーん! お弁当だよ」
「もちろん私のお手製だけど……目を瞑って、白翼 あかねが作ってくれたと脳内変換するぅ? ……ま、いいけどさ。ほんと、好きだよね」
「あーんってしてあげるね。じゃあ目、瞑ったまま」
「んー……ふーっ。あっ、耳に吹き込まれて驚いたでしょー。顔真っ赤にしてさー。んふふ、じゃあもう1回。ふー……あら今度は用意が出来ちゃってたか。はいはい。あーんしてねー」
「ん、どう? 美味しい。私が作ったんだからね。昨日の放送でお弁当作るって言ってたのこういうことかって、そうだよ。早めに起きて頑張ったんだから。感動してる、か。どれは白翼 あかねに? それとも、私?」
「どっちもって都合のいい回答だなぁ。うーん、まずご飯食べよっか。はい、お弁当。次はあーんしないからね」
「ああ、そんなにがっつかないの。ゆっくり食べようね、ゆっくり……ね? あはは、あんたは本当囁かれるのに弱いねぇ」
「ん、ごちそうさま。さてと、あまり時間もないし、今日も膝枕──なにか焦ってないかって、そんなわけないじゃんー。ほらほら横になって。ヘッドロックして無理矢理しちゃうよー」
「はいお利口さん……んー、むー。今日も髪はさわさわ柔らかいねぇ。特に何にもしてないんでしょ? 羨ましいー」
「……ん、よし。決めた。こらっ、顔あげないの。ガシッと固定っ……ねぇ、私がね、なんでVになったか当てて見て?」
「まーまーいいじゃん、とりあえず答えて見てよ。ほら耳に近づいてーいーち、にーい、さーん、しーい、ごー、あと五秒ね。なーな、はーち、きゅーう、じゅう!」
「どお、なにか思い浮かんだ? 耳が五月蝿くて考えられなかったぁ!? なんてこと言うの。冗談。そうね、冗談だよね。で、ヒントぉ? うんん、あんたが原因とだけ」
「……わかる? 鈍感なあんたにはわからないかもなー」
「……ん、そう。正解。驚いた? まあそりゃ驚くよねぇ。俺のため、なんて普通に考えたら口にできないよ。恥ずかしくて。あっ、照れ隠しに太ももぷにぷにしないのー。もー」
「私も……あんたに見てもらいたくてVやったなんてさ。言いにくかったの。ひとりのためにそんなことするなんて、ガチみたいじゃん。うっ……なーににやにやしてるのよ」
「あんたはさ、何事にも本気で一筋で、Vを見るのも一筋。一緒に帰ることはあっても遊ぶことが少なくなって……私、寂しかったんだよ?」
「君は私のこと全然見てくれなくてさー。自分で言うのもなんだけど、スタイルには自信あるし、油断してたよね。一緒に居てくれるって。でもそうじゃないって分かったから、私は動くことにしたんだ。それでV? って言ったでしょ、あんたは一つの物事に集中したらそれしか見ないんだから……私はVになって、私に集中させてやるって思ったの。数多いる中から私だけ見つけるなんて、普通に考えたらできっこないことだけど……あんたは見つけてくれた。それが嬉しかった。まあ目論見とは別にちゃんとVって理解するとそうならないってわかったから……だから今こうして話してる」
「白翼 あかねとしてじゃなく、私を、白鳥 恋羽を見てほしい。私と、付き合ってほしいよ。Vが好きなあんたはどう返事するか正直怖いんだけど……また後悔するぐらいなら、覚悟が鈍るぐらいなら言うべきかなって思ったんだ」
「……ん? 自分がVをめっちゃ見るようになったのは、私が構ってくれなくなったから? え、なにそれ! 言えない理由ってそれ!? いつの話よそれ。半年前ぇ? あなたがV見始めたって言うから焦った私の早とちりってなによー。ほっぺぐりぐりしてやるんだからー。ぐりぐりぐりぐりー。まー、早とちりでよかったけど、ちゃんと言わなかったから拗れたのかな……幼馴染でもちゃんと言わないとダメだよね……」
「ちょっと耳に近づくね。もう一度、ちゃんと言うよ? んっ、わたしはあんたが好き。好きなものには一途なあんたを独り占めしたい。私と付き合ってください」
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