131 王都は第二王子誕生のお祝いムード
そんなことを考えながら町並を眺めていて、ふと気付く。
「なんだかすごく賑やかですね?」
道を歩く人達、立ち止まって話をしている人達、お店の店員やお客さん達が、みんな笑顔で楽しげだ。
普段の王都の姿は知らないけど、町全体が明るく活気に満ち溢れているみたい。
もっと言うなら、今にもお祭りでも始まりそうな、そんな風に浮かれているように見える。
「ああ、第二王子シャルル殿下がご生誕されたから、それをお祝いしているんだろう」
「あ、無事に生まれたんですね! お名前はシャルル殿下と言うんですか」
まだ王都に着いたばかりなのにすでに知っているなんて、お父様ったら耳が早い。
きっと王家や主な貴族、そして商人達が、王国中に知らせを届けているのね。
私達はたまたま馬車の旅の途中だったから上手く知らせを受け取れなくて、侍従か護衛の兵士がどこかで聞きつけたのかも知れない。
でも、そっか……無事に生まれたのなら良かったわ。
私も間接的にだけど関わったから、少し気になっていたのよ。
「王妃様もご無事なんですよね?」
「ああ、問題があったとか、その後体調を崩されたとか、そんな話は聞いていないな」
うん、本当に良かったわ。
これで王家は益々安泰。
王様に第二王妃や愛人を押し付けようとする貴族達を牽制出来て、少しは政治的に安定するはず。
お父様も、ゼンボルグ公爵派の貴族達も、これで変に王国を乗っ取ろうなんて陰謀を企む確率は下がったはずよ。
そんな陰謀より、大型船の開発と貿易に力を入れて、ゼンボルグ公爵領を経済的に発展させるべきって。
それで馬鹿にしてきた貴族達を見返してやろうって方向に、益々舵を切ってくれるに違いないわ。
うんうん、『ゼンボルグ公爵領世界の中心計画』は順風満帆ね。
それで、シャルル殿下はエルヴェと同い年なんだから、二人が仲良くしてくれたら言うことはないわ。
ただ、一つだけ気がかりがあるとすれば……。
第一王子のレオナード殿下のこと。
私みたいに、弟が出来て喜んでくれているといいのだけど。
私は嬉しくて仕方なかったけど、男の子って、弟が生まれたらどう思うものなのかしら?
せっかくだから、『うちの弟はこんなに可愛い』談義が出来たら最高じゃない?
それなら、お互いに陰謀とか拳銃を突きつけて死ねとかじゃなくて、平和的に仲良く出来そうだし。
こういうとき、スマホがないのがつくづく残念よね。
スマホがあれば、旅の間もエルヴェの写真や動画を眺められたし、フルールに頼んで日々の記録を毎日送って貰えていたはず。
そしてそれをお互いに見せっこすれば、『うちの弟はこんなに可愛い』談義はきっと盛り上がるに違いないのに。
「ほら見てマリー、王都中でお祝いするために、準備が進められているみたいよ」
「わあ♪」
お母様に促されて行く手を見ると、通りに派手で豪華な飾り付けをしている人達と、それを監督している役人や騎士達の姿が見えてきた。
「国を挙げて祝うことはもちろん、特に王都では第二王子のお披露目の式典を催されるだろうから、きっと盛大なお祭り騒ぎになるだろう」
「そのための飾り付けなんですね」
さっきまでの通りで作業している姿がなかったのは、きっと宮殿の近くから作業を始めて、大きな通り沿いを順に進めているのね。
気合いを入れて飾り付けをしている人達の気持ちがよく分かるわ。
「王都の屋敷には恐らく、式典に出席するよう招待状が届いているだろう。王家に届ける祝いの品も商会から届いているだろうし、その確認もしなくてはな」
「その式典には、私も出席するのですか?」
「いや、私とマリアだけだな」
「そうね。社交界にデビューしている子達なら出席出来るでしょうけど、それより小さな子供達は、式典に出席するのはまだ許されないわね」
「お祝いの場と言っても、公式の行事だからね」
それは残念。
赤ちゃんのシャルル殿下と、レオナード殿下の様子を見てみたかったのに。
「ヴァンブルグ帝国大使館のパーティーと合わせて、今回の王都滞在は忙しくなりそうだ」
うん、それは忙しくなりそう。
王都に出てきた以上、そのパーティーと式典に出席するだけでゼンボルグ公爵領へ戻ったら、もったいないものね。
詳しく予定を聞いてはいないけど、あちこちの貴族の夜会に出席したり、商談したり、お父様は色々と忙しいはず。
お母様もそれに同行したり、ご夫人達だけのお茶会に出席したりがあるのよね。
でも、私の予定はヴァンブルグ帝国大使館のパーティーだけ。
後は王都観光をしていれば良さそうだから、王都をのんびり楽しませて貰おう。
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