127 陰謀かただのお見合いか、それとも悪女プレイか
いえ、待って。
そう決めつけるのは
お父様は選択肢と言った。
だから本気で私とレオナード殿下を結婚させて、オルレアーナ王国を乗っ取る陰謀の発動を決めたわけじゃないわ。
パーティー参加への打診があったから、その選択肢が浮上したと言うだけ。
まだ、大丈夫。
ましてや陰謀が前倒しで動き始めたわけじゃない。
でも……。
もしかして、これって私のせい?
ワッケ子爵の寝返りを阻止したから?
そして、『ゼンボルグ公爵領世界の中心計画』でゼンボルグ公爵領の経済が少し上向いてきたから、ヴァンブルグ帝国にゼンボルグ公爵領と手を結ぶ選択肢を考えさせて、今回の事態を招いたと言うこと?
もしかして私、自分で自分の首を絞めている!?
「ああ、済まない。そんなに難しく考えなくていいんだよ」
「そうよマリー。ごめんなさいね」
お父様が公爵から父親の顔になって、お母様も私の頭を撫でてくれる。
「パーティーに参加したからと言って、皇子殿下かレオナード殿下、どちらかを選んで婚約を考えなさいと言っているわけではないよ。もちろん、他の誰かともね」
「マリーにはね、幸せになって欲しいの。もちろん、ゼンボルグ公爵家令嬢としての務めを抜きには考えられないわ。でもその中で、最大限マリーが幸せになれる結婚をして欲しいの」
「その通りだ。それにマリーには『ゼンボルグ公爵領世界の中心計画』を完遂して貰わなくてはならないからね。今、他家に嫁がせるわけにはいかない」
「だからね、マリー。凡ゆる選択肢を考慮しつつ、全ての選択肢を残すように立ち回って、いずれ最善の選択肢を選び取る。貴族令嬢として、公爵令嬢として、そう振る舞えばいいのよ」
それってつまり……。
小学一年生くらいの男の子の将来性を考えて、ほどよい距離でいい関係を築きながら、品定めをしてキープしましょう、と言うこと?
それって、幼い男の子達を手玉に取れと言うことよね?
なんだかそれって、すごく悪役令嬢っぽい……いえ、悪女っぽくない!?
「ふふ、マリー、その程度は貴族令嬢としての嗜みよ」
お母様……。
初めてお母様が
きっとこれが、母親ではない、公爵夫人としての顔なのね。
でも、私にはとてもじゃないけど、真似出来そうにない。
だって、前世でも彼氏いなかったのに!
だからそんな信頼した目で見られても困るわ!
「む……難しいです、ママ」
「大丈夫。わたしがちゃんと指導してあげますからね」
「…………よろしくお願いします」
これはもしかして強制イベント?
初めてのパーティーが、とんでもないミッションになっていない!?
翌日からパーティーの準備が始まって、ドレスを新調し、ヘアスタイルとアクセサリーを合わせるファッションショーになって、お母様とエマの着せ替え人形にされてしまった。
それはそれとして、普段のお勉強と魔道具開発のお仕事、さらに職業訓練学校の開校に向けての準備、王都でのブルーローズ商会の新店舗の準備、各地の特産品を生かした料理を提供する料理店と食材の供給網の準備があって。
さらにパーティーへ向けて、礼儀作法、ダンスの特訓があって。
加えて、普段以上にヴァンブルグ帝国の言語、歴史、政治、経済、マナーのお勉強が厳しくなって。
その上、万が一の事態を想定してなのか、馬術と剣術の稽古まで、ね。
「ああ……エルちゃん……お姉ちゃんを癒して……」
エルヴェを抱っこして、ぷにぷにほっぺに頬擦りする。
可愛い弟の癒やしがなかったら、倒れていたかも。
そうしてただでさえ忙しかった毎日が、輪をかけて忙しくなって、準備の日々が過ぎていき、遂に王都へ出発の日がやってきた。
「エルちゃんと数カ月も離れ離れにならないといけないなんて……お姉ちゃん寂しくて死んじゃいそう」
フルールに抱かれたエルヴェに頬擦りする。
急遽、お母様がフルールを屋敷に呼び戻して、エルヴェのお世話を頼んだの。
パーティーには、お母様も公爵夫人として参加しないといけないから。
「大丈夫ですよお嬢様。エルヴェ様のことは私にお任せ下さい」
「うん」
寂しいけど、片道一カ月もの馬車の旅は、生後間もない赤ちゃんには厳しいものね。
「行ってくるわねエルちゃん。フルール、後はお願いね」
「はい。行ってらっしゃいませ奥様」
何度も後ろを振り返りながら、エルヴェに手を振って馬車に乗る。
馬車が出発すると、窓から顔を出して見えなくなるまでエルヴェに手を振る。
フルールがエルヴェの手を取って、手を振ってくれたのがほっこりするわ。
やがてエルヴェが見えなくなって、仕方なく席に座り直した。
「さて」
気持ちを切り替えて気合いを入れないとね。
思った以上に重要なパーティーになる。
陰謀が果たしてどうなるか、私の行動、態度次第だ。
考えるだけでものすごくプレッシャーだけど……。
お父様とお母様とエルヴェ、そしてみんなの明るい未来のために頑張らないと!
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