普通になるために

温故知新

普通になるために

「ねぇ、どうしてみんなには出来ることが、僕には出来ないの?」



 途方に暮れて泣いている僕に悪魔が囁いた。



「それは、君がじゃないからさ」

「普通?」

「そう、君が普通じゃないから出来ないんだよ」



 そう言って微笑む悪魔に僕は縋りついた。



「それじゃあ、どうやったら普通になれるの?」



 涙を流しながら懇願する僕を、悪魔は待ってましたと言わんばかりの笑みで見ていた。



「それはね、君という人間のを封印することさ」

「人格を封印?」



 小首を傾げる僕の頬を悪魔はそっと撫でる。



「そう、君が普通になれないのは、君という人格が普通という理から外れているからなんだ。でも、君の人格を封印すれば、君は普通になれる」



 悪魔の言葉に僕は目を見開いた。



「僕が、僕という人格を封印すれば、みんなと同じことが出来るようになるの?」

「そういうこと」



 微笑む悪魔の手を取った僕はこう言った。



「それじゃあ僕、僕という人格を封印するよ!」



 喜びの笑みを浮かべる僕を悪魔は優しく笑った。



「それじゃあ僕は、君の人格を封印した後、君に新しい人格を植え付けるよ」

「新しい人格?」



 再び首を傾げた僕に優しい笑みを浮かべている悪魔が口を開いた。



「そう、今の君の人格を封印した後、君の人格は当然だけど無くなる。そこに、僕が新しい人格を植え付けるんだよ。君が普通になれるような人格を」



 親切な悪魔の言葉に僕は強く頷いた。



「そう言うことなら頼むよ!」

「うん、分かった」



 こうして僕は、悪魔の言う通りに自分で自分の人格を封印した後、悪魔によって新しい人格が植え付けられ、みんなと同じことが出来るようになった。

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