第26話 噂集めの作戦
楽しく美味しい晩餐だった。ドネットさんとマルコーさんの命運も尽きることなく、クレアンヌさまのお口にあっていたようでなによりだ。心なしか昨日よりもクレアンヌさまの機嫌がよかったように思う。ブルーベルさんのお話をしてくださった。ブルーベルさんはやっぱり街の兵団の出身だった。それも王宮警護に当たっていたこともあるという。あの物腰と眼光の鋭さはそうした過去の歩みの集積だったのだ。クレアンヌさまは話しながら時折僕の頭を見つめて微笑んでいた。少しだけ先程の蹂躙が思い起こされて背筋に冷や汗をかいたが、その後触られることもなくその場がお開きになった。
僕は部屋に戻ってきた。4人の従者方は、何やらやる気満々な様子で僕の着替えを済ませてくれたが、僕は考え事に夢中で上の空だった。今日は明日からの作戦をまとめたいので、少し1人にして欲しいと頼んだら、みるからに
クレアンヌさまは、ここ最近の国内のモノの流れが気になっておられるようだ。晩餐の席でも露天でのことをいくつか聞かれた。挨拶周りに行かなかった露天の人も僕の方を気にされていたようだし、何かあるのかもしれないが、今は情報があまりないので分からない。
国に入ってきたばかりの人達、とくに、商人や旅人の間で、どのような噂がされているのかを調べてほしいとクレアンヌさまは僕にご依頼された。物の流れを知りたいということなら、普通は市場調査と聞き込みを行えば、ある
昨日の晩は、いつの間にか眠ってしまったようだ。机に腰掛けていたはずが、ベッドに寝かされてしっかりと布団をかけられていた。体格的に割と同じくらいの僕を持ち上げて、ベッドに寝かせるのは大変だっただろう。朝一でお礼をしないと。
目が覚めてベッドから立ち上がり、着替えをしようとしたところ、扉が小さくノックされた。
「はい、起きていますよ」
扉に向かって声をかけるとアヌエスさんとサイネリアさんが入ってきた。
「「おはようございます、フィーロ様」」
「おはようございます。サイネリアさんにアヌエスさん。昨日はベッドまで運ばせてしまってすみませんでした。ちゃんとベッドで眠るよう、気をつけます」
2人にお礼を言うと、サイネリアさんが口を開いた。
「昨日はジュリーがフィーロ様をベッドへ運んでくれたんですよ。なので、朝食の後、ジュリーに会った時に伝えてあげてください。私たちはそれまでにジュリーとは別行動だから、先に伝えることはできないんですよね」
「ジュリーさんがお一人で僕を?」
アヌエスさんが少し興奮気味に。
「そうなんです、フィーロ様!ジュリーはすごく力持ちって訳ではないって本人は言ってましたけど。私だったら二人がかりで何とか、ということを一人でできちゃったんです。ジュリーはすごいですよね」
「すごいですね、ジュリーさん」
僕より背の低い彼女にそんな力があるなんて。従者服はほとんど露出箇所がないのであまり気にならなかったが、実はものすごく筋肉質なのかもしれない。
着替えと朝のお清め(脱がされてハーブ水で全身を拭かれる)をされて、今は朝食を食べている。今日はヤハゥエさんが料理を運んでくれた。
ヤハゥエさんは厨房では1番年若く、サイネリアさん達と同じくらいだろう。1度話した感じではとても話しやすく真面目に仕事に打ち込むタイプの印象だった。料理人を目指しており、このお屋敷には3年ほど前に来たと言っていた。髪の毛をしっかりと厨房帽子に収めて、
朝食が済み、ヤハゥエさんに手を振って部屋に戻ってきた。今日も旅服に身を包む。やはり安心感が違う。できることならこの服をずっと着ていたい。今になって実感したのだが、雨の日も嵐の日も森や
玄関まで案内してもらい、アヌエスさんとサイネリアさんにいってきますと告げて外に出る。てっきり今日もドネットさんが案内してくれるものと思っていたが、待っていたのは意外な人物だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます