第25話 魔法のお披露目
「フィーロ様、本日は耳を魔術で強化されていないのですかな?」
ブルーベルさんの言葉と、それから意味あり気な視線にハッとして。僕は素早く席を立ち、クレアンヌさまの前に
「クレアンヌさま、
軽くクレアンヌさまのお手に自分の手を重ねて感謝を伝える。ブルーベルさんの優しさがあってこそだったが、昨日の作法の練習を活かせてよかった。クレアンヌさまのお手を離して、ブルーベルさんを見上げる。
「ブルーベルさん、お席に距離もあるので、魔法で聴覚を強化してもよろしいでしょうか?」
「ほう、
「魔術か。
クレアンヌさまの瞳が怪しげに光る。きっと魔法をその目でみるのは
「わかりました。では、昨日よりも見た目にわかりやすい魔法がよろしいですね。少しだけお時間を失礼いたします」
僕は
「
【兎の耳を貸しておくれ】
僕の頭部の両側面から、灰色と白色の混ざった毛並みに包まれたトンガリ耳が
「フィーロよ!触っても良いか!?触るぞ!?」
さっそく
「ぁ・・・う、クレアンヌさま・・・や・・・優しく・・・・・・ぅあ・・・・」
クレアンヌさまの細い手指が、僕のうさ耳の
「これは!意外としっかりとした毛並みで、ちとチクチクする所もあれば、ここのように柔らかい毛質のところもあって、動物の耳を精巧に、忠実に再現できるのかしら?手触りが
「ぁ、やっ・・・・!ぅぅん・・・さ、触られるの・・・・初めてなので・・・うあっ・・・ゾクゾクが・・・ひゃぁ・・・・・ぁぁあ」
「ドネット、ブルーベル。そなたらも触ってみぬか?気持ち良いぞ」
クレアンヌさまは満面の笑みで堪能しながら他の人にも僕の耳を勧める。
「クレアさま。そのくらいにされてはいかがでしょうか?フィーロ様が身悶えておられますよ」
目尻に涙を浮かべる僕の姿に、ブルーベルさんが救いの手を差し伸べてくれた。
「えぇ、でも、
ブルーベルさんの言葉で離れかけた手が再び
「ふぁ・・・!はぁっ・・・くはぁ・・・・・!」
もう
「フィーロ様。喉を痛めるといけませんので、少しだけでもお飲みください」
「ぁりゅが、ひゅー・・・ごはっ!ござぃっまひゅ」
息も
クレアンヌさまは感触を確かめるように手を見つめ、さわさわしていたが、ブルーベルさんが車輪を進めた。
「フィーロは、たった一日、
離れ際にクレアンヌさまがドネットさんと僕に視線を投げかける。僕とドネットさんは互いに顔を見合せ。もう一度クレアンヌさまを見る。奥の席に遠ざかるクレアンヌさまの口元には、微笑みが形作られていた。まだ、十分に息の整わない僕に変わって、ドネットさんが答えてくれた。
「フィーロ様には、お使いの品が見つからなかった
「そのようなことが・・・。でも、私への報告は無かったわね。どういうことかしら、ドネット?」
「申し訳ございません。料理長に、その、あまりにも状態の良いものなので、ご当主様には内緒にして、美味しい料理を召し上がる際にお伝えして欲しいと頼まれておりました」
「わかりましたわ。そこまでの
ゾクリ。クレアンヌさまの表情を見つめながら、乾いた喉に流し込んだラモーネ水がとても冷たく思えた。綺麗な人を怒らせると怖いっていつかの安宿で誰かがボヤいていたけど、今ならその言葉にすごく同意できる。
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