幻

第3話

優しくて、なんだかあたたかかった。

ほっとした。落ち着いた。

素から笑えた気がして。一生ここから抜け出したくなくなった。今楽しいから、このままがいい。

これは誰なんだろうか。私のことをとても知っているかのように話しかけてくれる、誰なのだろうか。

あぁ、また聞こえてきた。時間だ。

いつものように遠く強く怖く私を呼ぶ声が聞こえた。でもなんだかしつこくなくていつもと違った、。今日は何が起きているんだろうか。

とても不思議で仕方がないなぁ。

この世界すら不思議なのに。

なんだか今日は戻れそう。少し進める気がした。

こんな気持ちになることは滅多にない。

とても久しぶりだ。

懐かしいこの感じ。この世界に来る前にも

この気持ちを味わった。

なんだか楽しいな。

頑張って壁を登ってみよう。

登る気になった。

昨日より少しくらい、進めた気がした。

この世界の方がよっぽど楽しいけど。

なんだか向こうでもやっていけそうだなぁ。

壁なんて、壊せないなら越せばいいのかな。

そんなことを考えるようになった。いや、考える

余裕が出来たんだ。

楽しいってすごいや。

色んなことを考えられるしできる、。

たくさんの感情が生み出されて、向こう側の世界にも色がついたみたいだ。

とても面白い。この時間。

面白くてすぐにすぎてしまう。

また時間が来た。今日は昨日より少し近い。

少し強いけれど、自分から行こうと思えるように

なった。私にとっては大きな成長だ。もしかしたら

あの世界とこの世界は、馴染んできているのかもしれない。