第3話(最終話) ある日のラジオ番組(本番終了後)
はい、OKです!REN&AIさん、お疲れ様でした!
「「お疲れ様です」」
「おつかれさまでーーっす」
あ、RENさん、さっき見たらいつもの自販機に、なんか新作っぽいのありましたよ?
「!!AIちゃん、いい!?」
「「はいはい。10分ね」」
「多謝!」
「「いえいえ」」
おー、元気よく行った行った。
「「・・・すいません、いつもRENが落ち着かなくて」」
はは・・。以前の打ち合わせ中に、「うちの自販機に新作ジュースでた」って何気なく言ったら、RENさんほとんど上の空で打ち合わせになりませんでしたから・・あれなら先に買ってくれた方が、こちらとしてもましですよ。
「「なんと言ったらよいか・・ご迷惑をおかけします」」
いえいえ。さっきの話じゃないですけど、RENさんってやっぱり天才肌なんでしょうね。
「「そうなんでしょうね。・・・だから私は、甘やかしちゃうんだと思います」」
そうなんですか。・・・えーっと、差し支えなければ、打ち合わせ前にちょっとお聞きしてもよろしいですか?
「「・・そうですね。こちらのみなさんは、私やRENのことを番組はもちろん、それ以外でも理解して自由にさせて頂いてるので・・少々、愚痴も含みますがよいですか?」」
もちろん。こちらからお聞きしたことです。
「「ありがとうございます。最初に私がRENを知ったのは、高校に入って2週間くらいですか。高校生活にちょっと慣れ始めた頃です」」
あれ?同級生でも、クラスは違っていたんですね?
「「3年の時は一緒でしたが、1,2年生の時は違いましたね。・・1年生時、今以上に人付き合いが得意じゃない私は、自分のクラスになじもうとするのに精一杯でした」」
・・そうだったんですか。
「「そんなある日、私の耳に、というより多分学年全体に、こういった噂が流れました。「この学年に、モデルみたいにカッコ良くて、勉強も運動もできる漫画みたいな女子生徒がいる!」と」」
それがRENさんだったんですね。
「「そうです。・・今ならそんな偏った情報で人を見るのはどうかと思えますが、当時は「どんな人なんだろう?」という興味の方が強く、他の子に誘われるまま、「噂の女子生徒」を見に行きました」」
・・・。第一印象はどうでしたか?
「「大人になった今がより洗練されていると思いますが、高校生に成り立ての当時でも、そのクールな容姿は際立っていると一目で思いました。勉強も運動もできるんだろうなと想像出来ましたし、実際その通りでした。」」
「「・・・同時に、違和感・ギャップも、ちょっとだけ感じました。正確には、しばらく後になって、「思い返してみるとそう感じていたんだろうな」というような感じですけどね」」
違和感ですか?
「「そうです、違和感です。・・その答えは、多分こちらのスタッフの方含めて、「REN&AI」と関わってくれている方は、何となく察してくれるんじゃないかと思います」」
えっと、・・・すみません、どうも私は察しが悪いようで・・
「「いえいえ!ちょっと意地悪な言い方でした。そうですね。・・・RENがラジオで始めてトークした時、どう思いましたか?」」
あ!それは、
「「正直に言ってくれて大丈夫ですよ」」
・・・・・ 意外でした。あんなにゆったり話される方だったなんて。
「「そうです。・・・RENはもとから、天然おっとり系の性格なんです」」
―――――――――
あれ?RENさん?収録終わったの?
「あ~~、別のスタジオスタッフさんだ~ お疲れ様です~~ 終わったのです~」
はい、お疲れ様です。AIさんがいないってことは、・・はぐれちゃった?
「それは心外の極み~~ 今は新作探索~~ AIちゃんのお墨付き~」
・・ああ、そういや、あそこのスタッフさんがこぼしてたっけ。AIさんのお墨付きなら安心だ。
「うむ。うちのAIちゃんは凄いの~」
そうだね。でも、RENさんも相当凄いよ?
「業界人として、卑下はし過ぎないようにしてるから、甘んじて受けます。ありがとうございます~」
「・・でも、AIちゃんの凄さはベクトルが違うのです~」
ベクトル?どういう風に?
「いろいろあるけど~。・・一番はわたしとユニットを組んでくれてること~」
―――――――――
「「RENの性格、ペースの方が伝えやすいですかね?は、ああいった感じで。かなりゆったりなんです」」
・・ですね。
「「なのに容姿はクールで理知的。キビキビとした印象を持たれる。それが違和感の原因だと思います」」
・・・・・
「「あ、すみません。スタッフさんを責めているんじゃないんです。一般的な認識でしょうし、私自身最初はそういった子として、RENを見ていましたから」」
こちらこそすみません。すみませんついでに、違和感を持たれたのにですか?
「「その頃は、違和感の正体がわかっていなかったんだと思います。クラスが違う事もあって、私とRENに接点はありませんでした。最初に話をしたのは、球技大会の時です」」
球技大会・・懐かしい響きです。
「「スタッフさんもお若いですよ。1年の時の球技大会で、私とRENは偶然同じバレーボールを選んでいました。そして試合が当たったんです」」
「「さっきも言った通り、RENの運動能力は抜群でした。学校の授業くらいしかやったことないのに、バシバシアタックを決めるんです」」
・・なんか想像できますね。
「「おまけにうちのクラスのバレーボール部員が、「あれはうちのレギュラークラスだね。素人にはお勧めできない。」とか言っちゃったので、クラスの士気はダダ下がりでした」」
・・そのバレーボール部員の方にも、個人的に興味がわくのですが?
「「とは言え、学校行事に手を抜く気はないですし、ちゃんとした経験は無いですがバレーボールは苦手じゃないですし、・・なにより私は負けず嫌いなので、少なくともあっさり負けるのは・・ね?」」
AIさん、怖いです怖いです!!
「「・・・失礼しました。コホン。まぁ、その負けん気からか、これまで誰もまともに取れなかった彼女のアタックを、何回か返したんですよ。気合で」」
「「そうしたら、これまで破竹の勢いだった彼女、RENはどうしたと思います?」」
どうしたって、・・勝負的にAIさんのいない場所を狙うようにしたとか?
「「と、思いますよね?・・逆なんです。全部が全部じゃないですが、機会があれば、私ばかり狙ってくるんですよ!」」
RENさんも負けず嫌いだったんですかね?
「「それもあったと思いますが、試合が終わった後、私に向かってこう言ったんです。「すごいです~ あなたのレシーブ、カッコいい~~」って」」
えっと・・あれ?
「「それが私と彼女が話をした最初でした。あ、ちなみにバレーの結果はRENたちのクラスの圧勝で、そのままさっくり優勝しました」」
・・うん。ちょっと待ってください。・・・突っ込みどころが追い付かないんですけど!?
「「そうなるようにわざと言ってますから。 そしてそれから、私とRENは少しずつ親しくなっていったんです」」
――――――――――
AIさんの凄い所が、RENさんと組んでいるところ?そりゃあ、AIさんも凄いアーティストと思っていますけど?
「そーゆーのじゃなくて~、なんてゆーか~。そーだ!さっき、AIちゃんのお墨付きなら安心って言いましたよね~」
え、ええ、言いましたけど?
「つまりはそ~ゆ~こと~~」
う、う~ん・・・? すみません、もう少しわかりやすく教えて欲しいんですけど?
「ぬぅ~難題なり~~。じゃあ、そーだね~、私が不審な服を着た男の人の指示でここに来たって言ったら、どうしますか~」
通報します!
「真顔で即答にはRENもビックリだよ!・・じゃぁ~、不審な服を着たAIちゃんからの指示って言ったら?」
不審な服を着たAIさんを見てみたいです!!
「あ、それは私もだ~。でも今回はそうじゃなくてぇ~、AIちゃんからの指示って聞いたら、どう思う~?」
えっと?まぁ、納得しますかね。
「じゃあ~、局の偉い人からの指示って聞いたら~?」
指示なので通しますが、一応AIさんにお伺いを立てますかね。・・あれ?
「そ~ゆ~こと~」
「RENという人間を一番理解してくれてるのが、AIちゃんということ~」
―――――――――
えっと、すみません。話を戻しますが、RENさんは「AIさんのレシーブがかっこいいと思ったから、あえて狙っていた」んですか?
「「本人が言ってるから、そうでしょうね。気づきました?私がRENのおっとり口調の真似をしていたの?あんまり上手じゃないですけど・・」」
あれ?そう言われてみれば?なんでです?
「「あとで本人に聞いたら、「興奮して~、素が出ちゃったなり~~」だそうです。・・・せ、説明のためあの子の真似をしていますが、声マネについてはできれば忘れてください・・」」
ご安心ください。録音はしていませんので!
「「記憶からも忘れてください!・・真面目な話に戻すと、RENが私に最初に言ったおっとり口調の素の言葉は、周りの何人かにも聞こえていて、まぁ、軽く空気が止まりました」」
この業界でそこそこ、色々特徴のある人たちを見てきた我々スタッフですら、かなりのギャップでしたからね・・
「「不幸中の幸いじゃないですが、私の見た目が「おっとり系」だったためか、相手に合わせたんだろうと言う雰囲気になりました。わざわざそれを否定することは無いなと、私もそのように振舞いました。が、直感で「あ、この子はどこか無理してるんじゃないかな?」と思ったんです」」
そう感じたのは、どうしてですか?
「「それはたぶん、・・・私が似ているからです」」
「「私も、幼少期から見た目がおっとり系なのに対し、性格はせっかちなタイプなので、REN程じゃないにせよ、たまに「なんかイメージと違う」とか言われていたんです。だから、感じられたのだと思います」」
・・そうだったんですね。
「「はい。・・まぁ私の場合は、人の世話みたいなことをやるのも嫌ではないので、せかせかしていても「自分に厳しいお世話焼き」みたいに思われるようで。・・まぁそう思われるのは悪いことじゃないので、なんていうか許容していたんです」」
それは理解できますね。
「「・・あっさり言われたら、それはそれで思う所もあるんですけど・・ ただ、RENの事情は、私ともまた違います。人と積極的に関わる性格ではないし、よく知らない人がおっとりした素のペースを見せられたら、「馬鹿にしている」とか「キャラを作っている」みたいに思われることもあります。・・実際、芸能活動している今でも、そう言われることがありますし・・」」
はい。・・・残念ながら、「面白くするためにキャラ作ってますか?」と言った投書も、番組宛にいくつか来ています。
「「・・・一緒に会話をするように、友達になってからしばらくした時、勇気を振り絞って言ったんです。「自分のペースはこんなだよって、みんなに知ってもらった方がよくないかな?誤解されることもあるし・・」そう言ったら、RENは首を横に振って否定しました。「でも、誤解されたままでいいの?」と言ったら、うなづいて肯定して、こう言ったんです」」
「諦めてるとかじゃないんだぁ~。クールな自分も~きっと周りから見たちゃんとした自分だから~」
「このゆったりとした自分は~本当に私の身近な人にだけ~知ってもらえればいいんだぁ~~」
「「その時から私は、そんな考えのできるRENを尊敬するようになったし、同時に「本当に身近な人」の一人になろうと思ったんです」」
―――――――――
・・確かにAIさんは、RENさんの第一の理解者だよね。ところで凄い点の一番って言ってたけど、二番と三番は?
「む。・・・たくさん凄いのを順位付けするのはこれまた難問~~運動神経が良いでしょ~料理が上手でしょ~迷子探しが得意でしょ~~」
最後のは、RENさんに対して限定の気もするけど・・
「あとはそう!AIちゃんは、ものすごくカッコイイんだよぉ~~」
・・否定はしないけど、カッコイイをRENさんに言われたら、AIさんも苦笑いになると思うんだ。
「AIちゃんは~自分のカッコよさを~半分くらいしか知らないから~」
「少なくとも~「REN」のカッコイイの理想は~AIちゃんだから~」
うん?その辺詳しく!
「食いついたぁ~食いついたねぇ~~? では少しだけ教えましょ~ 昔々ある所に~女子こうせーのRENとAIちゃんがいました~」
なんで昔話口調?いや、確かに、昔話ではあるんだけど!?
「なんか人とちょっと違うらしいREN鬼は~、生徒な人たちから~遠ざけられていました~いじめではないレベルですがぁ~~」
あ、なんか結構わかりやすい。
「そんなある日~、REN鬼に近づこうとするAIというお姫様がいました~生徒な人たちは口をそろえて言いました~「AI姫。REN鬼は得体の知れぬ扱い難き存在!近づいてもろくな事になりませぬぞ!」と~」
・・生徒な人たち、村人と言うより、老中みたいなんですけど?
「それを聞いたAI姫~ ・・AIちゃんはこう言いました」
「「私が誰と親しくしようと、私の勝手でしょ!?そっちの判断で決めつけるな!!」」
「・・・それを聞いた生徒な人たちは~もうAI姫がREN鬼に近づくことに対し、何も言わなくなりましたとさ。めでたしめでたし~~」
・・・それは確かに、カッコイイ・・
「・・・ちなみに~、REN鬼がAI姫のカッコいいセリフを~、偶然たまたま聞いていたことは~、他言無用でお願い致す~」
今なんて!?
「た・ご・ん・む・よ・う・で・・・!!」
・・・聞かなければ良かった~~
―――――――――
・・・そんなことがあったんですね。
「「なんだか照れますね。・・えっと、隠すようなことではないですが言いふらす事でもないですし、できればここだけの話でお願いします」」
それはもちろん、そうしますよ。
「「ありがとうございます。・・って、あれ?話始めて何分くらい経ちます?」」
10分は・・・ちょっと過ぎてますね。
「「あの子!!?連れてきます!打ち合わせ、すみませんがもう少しだけ待ってください!」」
あ、大丈夫ですよ。私がお願いした話ですし・・
「「ありがとうございますーーー」」
・・って、駆けていったよ。・・・結構足速いな、AIさん・・
「「RENーーー!? あ、いた! ほら、打ち合わせ始まるよ!」」
「あー、AIちゃんだ~ スタッフさんとお話してたんだよ~~ ほら~、挨拶~」
「「あ、ごめん。お疲れ様です。AIと言います。うちのRENがお世話になりました」」
いえいえ、お疲れ様です。えっと、打ち合わせ、急がなくていいんですか?
「「そうでした!お気遣いありがとうございます!REN、戻るよ!」」
「AIちゃん、ごめ~ん。新作まだ買ってない~~」
「「なんばしよっとね!?」」
AIさんに謎のなまりが!?そして二人とも気づいていない!!?
「「ほら、この自販機でしょ?早く買った買った」」
「・・・・・ AIちゃ~~ん」
「「なんで涙声!?一体何?」」
「見たことない新作が~2本もある~~」
「「ガクリ・・・思わず声に出しちゃったけど、2本とも買えばいいでしょ?」」
「2本も飲めない~~」
「「・・飲めなかった分は私も飲んであげるから!ほら、2本とも買った買った!」」
「お~、AIちゃん、男前~~」
「「・・RENに言われたら、皮肉に聞こえるんだけど」」
ぁ、やっぱし・・
「「え?すいません、何か言われましたか?」」
あ、いえ、きっと、空耳ですよ?
「AIちゃん、買えた~~」
「「よーし、じゃあ、打ち合わせ中に飲ませてもらうってことで、待たせているんだから戻るよ?ダッシュダッシュ!!あ、スタッフさんすみません、失礼します。お疲れ様です!」」
「おつかれさまで~~っす」
ぁ、お疲れ様です。・・・って、二人とも、足速いなぁ・・・
「「げっ!私の苦手なやつ・・・REN、わざとじゃないよね?」」
「苦手を克服するべく邁進するAIひめ~~ おー、絵になる~~」
「「わざとか?わざとなのか!?」」
お、戻ってきた。そろそろ打ち合わせ始めまーす。
「「すみません」」「お待たせしました~」
「「「「REN&AI」、宜しくお願いします!!!」」」
――――――――――
※こちらは本編ではなく、音声作品とした際の作者からの注意書きになります。
会話の「」表記はREN役、「「」」表記はAI役のセリフになります。
「「「」」」はRENとAI二人同時のハモリを意識しています。
「」の無い地の文は、スタッフ役のセリフです。スタッフが二人登場しますが、声優さん3人までと言うことなら、一人二役でもいけるようなつくりにしています。
(イメージでは男性ですが、女性でもよいと思います)
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
ガールズユニット。とあるラジオ収録にて Syu.n. @bunb3
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