第177話 上杉家への使者―2
海翁は、すがすがしい檜の板敷き広間に、どかっと腰をおろして上座の昌幸と対面した。ゆうに六尺を超える大入道であり、
昌幸の左右には、幸村、矢沢三十郎頼康、海野六郎、根津甚八、筧十蔵、由利鎌之助をはじめとする主だった家臣が居流れる。
山野
ついに三十郎頼康がしびれを切らせ、本題へと水を向けた。
「して和尚、越後に赴かれたは、
ここで海翁は、はっとわれに返ったかのごとく膝を叩いた。
「おう、いかさま左様じゃった。愚禿としたことが、越後の風光に久方ぶりに接し、下らぬ話を牛の
三十郎がせっかちに先を促す。
「で、首尾やいかに」
「ご無礼つかまつった。此度の儀、もとより
喜平次とは、上杉景勝の幼名であり、通り名でもある
海翁が隻腕となったのは、謙信亡き後、勃発した上杉家の家督争い「
謙信の甥である喜平次景勝は、北条家からの養子である景虎と家督をめぐって争い、この内乱というか、内輪揉めに勝利した。海翁こと海野佐馬充幸光は、当時、景勝の旗本として活躍し、その功により景勝から感状を受けている。
海翁が言葉をつづけた。
「そして、拙僧が真田家の窮状を喜平次さまにお伝え申したところ……」
その場に居流れる一同が、息をのんで次の言葉を待った。
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