第107話 片手千人斬り
天目山麓の田野の戦いにおいては、特筆すべき武者がいる。
余談とはなるが、その武者を紹介しておこう。
勝頼一行が田野の地に追い詰められようとしたとき、一人の武者が追手の兵に敢然と立ち向かった。
家臣の土屋
惣蔵昌恒は、崖際の狭い道を辿って逃げ延びる主君勝頼の姿を見送った後、この断崖上の狭小な道に一人陣取った。
そして滝川一益の兵を前に高らかに名乗る。
「われこそは、武田二十四将の一人と数えられた土屋右衛門
「小癪な!」
「その増上慢の首、刎ねてくれよう!」
多勢を
惣蔵昌恒は崖上から
すると、惣蔵は、今度は崖っぷちの狭い道に陣取り、断崖に這う
崖下の川は、惣蔵に斬られた武士たちの血で3日間も朱に染まり、三日血川(みっかちがわ)と呼ばれた。
惣蔵昌恒は敵を一手に引き受け、勝頼一行の自刃の時間をかせいだのである。目的を果たした惣蔵は、田野の鳥居畑に陣を構えていた勝頼のもとに引き返した。主君のそばで死にたかったのだ。このとき27歳であったという。
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