第93話 夜叉姫の心根―2
それから三ヶ月が過ぎ、真田郷に春が訪れた。
真田郷上田の真北にある太郎山の山道をたどる三人の姿があった。先頭には幸村、そして佐江、女忍の火草である。
この頃、佐江と火草は同い年ということもあって、急速に親しい仲となっていた。しかも、この二人はともに細面で顔形が、あたかも姉妹のように実によく似ていた。
「戦さはイヤでございます」
山道を歩きながら、佐江は切れ長の眼を伏せるようにして幸村に語りかけた。
「あのような女子供に対して……むごうございます」
佐江は過ぐる日の出来事を思い出し、眉を曇らせた。
真田屋敷の大手門口に
弱肉強食、優勝劣敗は戦国の世の習いとはいえ、あまりにも過酷な現実であった。佐江はそうした光景を目にするたびに、我慢ができない。胸が締め付けられるように痛み、その痛みがつい衝動的な行動に走らせるのである。
二人のすぐ後ろを見守るように歩く火草もまた然りである。
佐江の
佐江はかつての弁丸軍団の中で「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます