第69話 いざ、真田郷へ―1
幸村ら一行は、
矢沢三十郎は愛馬の青鹿毛に跨り、鉄砲浪人の筧十蔵は栗毛の馬の
古くからある根津道をしばらく西へと進んだ後、
道沿いにのどかな里の景色がつづく。だが、その里の眺めも、じっと目を凝らして、よくよく観察してみれば、ただならぬ気配が宿っていることに気づくであろう。
真田郷を囲む山々の尾根や丘陵には、松尾城、砥石城、矢沢城、矢沢支城、伊勢崎城、根小屋城、
東信濃の
三十郎は先頭をゆく幸村と轡を並べ、話しかけた。
「ご覧なされ。美しい里でござろう。この地と領民の
幸村が前方を見据えたまま、三十郎の言葉にうなずく。
三十郎はその様子を見ながら、
――口の重いことよ。鳳凰の
と、心の中でつぶやいたとき、思いがけないことが起きた。
風上の殿城山の方角から馬蹄の轟きが伝わってきたのである。それも一騎や二騎のものではない。
十蔵が驚愕の声を発した。
「ややっ。あれはもしや、先日、三十郎どのを襲った盗賊どもでござろうか!」
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