第65話 筧十蔵―3
一方、命拾いをした三十郎は、
「いやはやかたじけない。あやういところを助けてもろうた」
と、礼を述べつつ、十蔵が手にする鉄砲に目を落とした。
それは、見慣れた「種子島」より、はるかに銃身が短いものであった。
十蔵は三十郎の視線に気づき、頬をゆるませた。
「ああ、これでござるか。この鉄砲はそれがしが工夫し、
訊けば、十蔵の生国は近江の国友村。代々、
ちなみに、戦国時代末期、日本にはおよそ50万挺の鉄砲があったといわれており、これは当時において世界最大の保有数であった。
種子島に鉄砲が伝来したのは、天文12年(1543)のこととされているから、ごく短い期間に武器として普及したことになる。
それだけ日本の戦国時代は、生き残り競争が激烈であったといえよう。
三十郎がひととおり話を終えたとき、下女が再び新しい茶を運んできた。それを旨そうにすすったとき、三十郎は幸村がまだ一度も口を開かず、おのれに真っ直ぐな視線を向けているのに気づいた。
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