第42話 龍の末裔―3
無口なのは子供たちばかりではない。
根津村全体が口を閉じた村なのである。
この村の草の者らは、基本的に野外で声を発しない。互いに
では、どうするかというと、今でいう手話のような動作や読唇術を使い、情報や意志を伝え合うのだ。他国の忍者や間者に、会話の内容を盗み取られないためであった。
根津の村の下忍の子らが、幼き頃より、こうした特有の掟や様々な術を身につけたということは申すまでもない。この村で生きる幸村もまた然りであった。
近在の小わっぱの一団が「若」と仰ぐ幸村の仕草ひとつ、目配せひとつから、意のすべてを汲み取り、日々野山を群れ動き、駆けめぐった。
その軍団のごとき様相は、養父の根津甚平をして、
「まさに壮観。虎の子は生まれながらにして虎。将の子は幼き頃より将であることよ」
と、感嘆の言葉を漏らしめた。
佐江姫と幸村が初めて出会ったのは、長篠の戦いより2年後のことである。信濃の山々があでやかな錦繍に染まり、どこまでもひろがる蒼穹に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます