第34話 根津家の猶子―1
真田昌幸は、根津甚平に頭を深々と下げた。
その昌幸の神妙な姿を見て、甚平が言う。
「さて、昌幸どのもご存知のとおり、当家では跡取りの男子に恵まれておらぬ。向後、万一、嫡子を授からぬときは、弁丸どのに家督を譲ることもあろうかと存ずるが、いかがであろう」
これに、昌幸は何喰わぬ顔で応じた。
「もしも先々、根津家にお世継ぎの誕生なかりせば、わが子弁丸を進ぜよう。申すまでもなく、われら両家は名門
「おおっ、ご承知置きくだされるか。ありがたや。そのお言葉で、ますます育て甲斐があるというもの。いまだ行方のわからぬ母御の千代乃どのも、この根津村で和子がすこかに育っておることをどこぞで耳にすれば、さぞや喜ばれよう。では、とりあえず
猶子とは、「
――これで、ゆくゆくは、この根津家は真田家のものとなるやもしれぬ。
昌幸は、内心、してやったりとほくそ笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます