第27話 幸村の出自―3
千代乃の命に従い、歩き巫女らは駿河に散り、主だった今川家の武将の言動を探った。特に、朝比奈、瀬名、三浦、
男というものは、肌を合わせた女には気を許しがちというか、油断する生き物である。少し水を向けるだけで、ほとんどの武将は今川家や氏真に対する不満を寝物語に語った。
その結果、今川家に離反の意を示す武将が、意外なほど多いことを、真田昌幸は知ることになる。
某日、昌幸は千代乃を前に、今後の策を語った。
「海道一の今川家も、もはや終わりよの。この上は、わしみずからが駿河に潜入し、ひと押しすれば、ことごとく武田家に内応するは必定。ただ怪しまれずに今川領内に潜入するには、女連れがよいと心得る。千代乃どのに配下の歩き巫女の中から、気の利いた者を選んでくれまいか」
一瞬、千代乃は沈思し、ややあって言った。
「私めがご一緒いたしましょう。ただし、何か変事が起きた際の陰守りは必要と存じ、腕の立つ草の者を手配しておきまする」
「陰守りとは、ひそかに守るということであるか」
「はい、何かあったときだけ飛び出してきましょう」
「その者の名は」
「戸隠の佐助どの。人は猿飛と呼んでおるとか」
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