良かねぇよ

 やられた。

 

 そう言わざるを得なくなったのは高校1年の入学式。

 

 クラス分けも決まり、担任の話も終わり、各々自己紹介という段階に入った時だった。


「俺は佐藤 山本さとう やまもと組織の人間としてこの学園を見守るように命じられた。だからここへ来た。よろしくな」

 

 俺の名は山本 佐藤やまもと さとう

 

 とある組織エラキストン・アグロスに命じられ、この学園を見守りこの学園で起こらんとしている争いを止めるべく、この学園へやって来た。

 

 組織にはこの役目を誰かにバラしてはいけないと言われている。

 

 もちろんバレてしまう事も厳禁だ。

 

 だからこそ、俺は考えた。

 

 俺は高校生。まだ厨二病が許される冷ややかな目で見てもらえる時期ではないか? と。

 

 ただの痛いヤツだと思ってもらえれば、逆に怪しまれずに済むはず。

 

 だが、2人も居たら怪しいだろ!

 

 この作戦は完璧だったはずだ。

 

 完璧だったはずなのに!

 

 クソ! 佐藤 山本め! 俺と似た名前しやがって。

 

 こうなればヤケクソだ。


「嘘を付くな!」

 

 ガタッと大きな音を立てて立ち上がり、叫ぶ。

 

「おおどうした山本君」

 

 担任が色んな意味で驚いている気がするが、知った事か。

 

「佐藤 山本、貴様はこの学園を見守るためにやって来たと言ったな? だが、それならば俺の目的を知っているはず。エージェントたるこの俺を監視するのだからそれ相応の実力者が派遣されていると思ったのだが? 貴様に学園の混沌化を止められるかな?」

 

 何言ってんだ俺は、エージェントがホイホイエージェントとか名乗ってたまるか。

 

 恥ずかしすぎてちょっと日本語が怪しい気がするし。

 

 というか突然作戦変更したから俺が悪役サイドになっちゃったよ。どうすんだクソ野郎。

 

「ほぉ……貴様が俺の敵か。名乗れ、名を」

 

 めっちゃノってくるやんコイツ〜。

 

「良いだろう、俺は山本 佐藤。この学園に混沌をもたらすものだ!」

 

 もたらさねぇよ、なんだよこのキャラ。

 

 もう周りの視線が痛いよ、痛いヤツになるとか言ったけどなりたくなかったよなんでこんな目に……組織のヤツらめ……。

 

「ふっ、気に入った。佐藤よ、俺の仲間になれ」

 

 敵対してるんじゃないのかよ厨二病の世界わっかんねぇ!?

 

「あぁ、良いだろう」

 

 良かねえよ!

 

 かくして、俺のクソ厨二病生活は始まった。


 ……始まんな!

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キャラ被ってるんだよ! 雨車 風璃-うるま かざり- @soutomesizuku

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