第9話「円だわ、これ」
ゲルムの町に着いた時にはもう夜だった。ギルドは既に閉まっており換金も出来なかった。
普通のギルドは24時間営業なのだが、ここは田舎ローカルルールによって夜はちゃんと閉店する。田舎のコンビニなんかと一緒の現象だ。田舎サイテー。
そんな田舎へのヘイトを高めつつ、心もとない本数の街灯が照らす薄暗い道を歩きながら、途中銅貨2枚で黒パンとテテノという果実を1つ買い、宿に戻った。
さていよいよ金が尽きた。もう明日の宿代は勿論、飯代もない。
明日は速攻で換金して、飯を手に入れたら早めに狩りに行こう。
簡素な食事を済ませ、さっさと寝ることにした。
因みに、テテノは、アボカドの様な外見で皮を剥くと色の薄いみかんの様なものが出てきて、味はマンゴーとびわを足した上でブロッコリーで割った様な味だった。割りと好きな味だった。
翌日の早朝。最初に木箱を出し、中身が腐ってない事を確認してギルドへ出かけた。
開店前のギルドのドア前でヒゲじいを待ち、朝一で換金してもらった。
内訳として次の通りだ。
緑葉薬草:計138束(内6束、良品質)、採取から1晩経過状態:銅貨65枚
バルトボアーの魔石:銅貨10枚
バルトボアーの牙:2本合わせて銅貨60枚
バルトボアーの肉:腿肉、肩肉合わせて銅貨80枚
バルトボアーの心臓:銅貨35枚
バルトボアーの毛皮:半分、荒い処置:銅貨12枚
以上である。
緑葉薬草は、適した保管環境のない状態で1晩置いてしまったので、本来は銅貨73枚ほどだったが少し安くなってしまった。
魔石と牙は適正価格で買い取ってくれたが、毛皮の方は、時間に追われ荒く剥ぎ取ったのと、半分の面積になるようぶつ切りだったため、かなり安くなってしまった。ちゃんと一匹分剥ぎ取っていれば銅貨25~35枚はあったらしい。
うん。まぁ総じて「しゃーない」。時間もなかったし、そもそも持ち運べなかったし。
それより金である。金。銅貨262枚である。10枚束を26本と2枚を渡され、テンションが上がる。この町では都合が良いらしいので、銀貨よりも銅貨でまとめてくれた。
「おい、そこに貼ってある討伐系の
「あん?」
「2日でゴブリン20匹にバルトボアー狩れるような奴をGランクにしとくわけにはいかねーんだよ!」
「こっちだってさっさとランク上げたいわ!見つからねーんだから仕方ねぇだろ!」
ブチギレ返すと、魔物の多い地域を教えてもらった。
俺はこの町の東方面から来て、ずっとそっちを探索していた。どうやら南方向がおすすめらしい。
「おっけ、行ってくるぜい」
「ああ・・・その木箱はどうかと思うが」
「うるせ」
木箱を抱え、ギルドを出る。たしかに、流石にカッコは悪いか。でもしょうが無いだろ。
ということで、さっそく飯である。正直ラノの店で食いたいのだが、今日は早めに帰って夕飯を優雅に楽しむつもりなのでパス。代わりに、肉を売った時に聞いた肉屋に向かった。
「へいらっしゃーい」
「串焼きとスープをくれ」
店を見つけた。どうやら出店の様にテイクアウト方式らしい。朝ながら肉の焼く音を鳴らしながら大きな鍋で肉入りスープを煮込んでいた。ジュルリ
「あいよ、どれにする?」
「バルトボアーを2本」
「スープの容器はどうする?プラントコップで追加銅貨3枚だよ」
葉と蔦で組み立てられた簡易的な長細いコップを見せてくる。使い捨ての碗やコップ代わりのような物か。
「どうするって他にどうするんだ?」
「ん?ちゃんとした食器が良いなら貸し出すし、自前のを持ってるんならソレに注ぐぞ?」
「ああ」
そういやなんかあったな。
ガチャで確認する。
『陶器の碗』
レアリティ:N
陶器製のお椀
・特にこれと言って特筆する事もない。
→使用
→強化
→売却
リュックに手を突っ込み、中から取り出す様に見せかける。
「これに頼めるか?」
「あいよ、全部で銅貨10枚ね」
「ああ、それと干し肉が欲しい」
「干し肉?ああ冒険者か」
「ああギルドでおすすめされた」
「わかった、ちと待ってな」
銅貨の束を渡し、先に串焼きを渡される。早速一口。うめー。空腹は何よりのスパイスだ。その後、店の奥にいる青年に声をかけていた。
「倅が対応するからよ。食って待っててくれ」
そう言いながらスープを注ぎ、渡してきた。
湯気と共に肉と油、何かの調味料の匂いが鼻孔をくすぐる。
串焼きと一緒に頂く。
あーうめー。コンビニの商品ほど味付けが良いわけではないが、素朴な味わいと素材の新鮮さが、空腹の土台の上で美味へと変化する。串焼きは胡椒のみかと思ったが、何かの下味が付いており、肉本来の旨味も感じられる。スープも具材は肉だが、おそらく野菜の出汁か何かを使っている。単純な味付けではない旨さだ。
空腹なのも相まって、あっという間に食べ終えてしまう。するとちょうど声をかけられた。
「干し肉をお求めのお客さんっすか?」
坊主の青年が出てきた。肉屋の倅だろう。
「ああ」
「量はどれほどっすか?」
「そうだな・・・とりま5日分で」
「わかりました。ウチは塩漬けと草漬けの2種類があるんですけど、どっちにします?」
ん?草漬け?知らないな。
「草漬け、ってのは、あれか?草で漬けてるのか?」
「はい。漬けるというより包んでるんですけど。タタリントの葉っぱにマナのある水をつけてからソレに包んで熟成させると、タタリントの風味と肉の下味が良い感じに引き出されるんすよ」
「へぇー」
「ただ塩漬けと違って、オーカウの肉とかシープの肉だと出来ないんで、別の肉にしてもらう必要があるっす」
「そもそも何の肉があるんだ?」
「普通っすよ?オーカウとキザミドリ、バルトボアーにトン・ラビット、ハウカルディアと後はカリング・シープ」
あー、牛に鶏、猪に兎、鹿と羊ね。正式名称と知識が合致していく。どれも一般的な食用肉や家畜達だ。
「因みに値段は?」
「あー全部見ます?」
「?まぁ出来れば」
そう言うと、一度店の中に戻り、木板を持って戻ってきた。
「今はこんな感じっすね」
書かれていたのは値段だった。肉によって値段は違うのは当たり前として、サイズが2種類あったり、3種類あったり、しかも塩漬けか草漬けかでも値段が違った。その数なんと計30通り。うん、めんどくせぇ。
「この値段表、表に出さないのか?」
表に出していれば、外で考えてから注文出来るだろうに。
「いやまぁ、ぶっちゃけ時価なんで、あと一般販売出来るほど数も用意できないんす」
「そうか」
値段の手頃な、オーカウ、トン・ラビットと量のあるバルトボアーをそれぞれ2つずつ買った。銅貨16枚だった。
更に昨日の買い物した通りで黒パンと火打ち石を買った。黒パンは銅貨5枚で7個セットを、火打ち石は銅貨1枚と通常よりも安かったのでついでに1つ買う事にした。
「行くか」
準備も足早に終え、町から南方向へと行く。
今度こそ討伐メインで探検していこう。周囲の確認もそこそこに昨日よりも早めに進んでいく。
森に入り、奥に進んでいく。が、やはりそう簡単には見つからない。
思わず足の速度も上がる。魔力も使う。
「つーか、魔力か・・・」
魔力。使えるようになってからは無意識且つ頻繁に使っている。バルトボアーとの戦闘でも役に立った。
今まで身体能力の強化に使っていたが、他に何か使えないだろうか?別に基本的な魔術はスキルが無くても使えるのだし。
とりま、魔力を集中しながら水を想像し、でろーと念じてみる。あるいわ水が生まれてくるようなイメージを持って魔力に意識を集めてみる。が、特に何もなし。やはり、そう安々とは習得できないか。
後は、なんだろう。とりあえず魔力を扱ってみるか。
例えば剣形にしてみたり。と、思ったが中々イメージだけでは難しかった。
歩きながらやっているので、完全に集中しきれてないのもあるかもしれないが、そもそも『一般的な冒険者の技能』を持つ俺が出来てないのだから、軽く出来はしないという事なのだろう。
他に何か出来ないかなー、と思いながら色々やっていると。
「ん?」
何か感触のような変な感覚が。
気になった方を見ると、少し離れた木陰に何かいる。止まって目を凝らして見ると見覚えのある兎がいた。多分トン・ラビットだ。
どうしようかと思った瞬間、こちらに気づいて逃げてしまった。
んん?
先程の奇妙な感覚を思い出す。そして直前の自分の行動も。
「試してみるか」
先程と同様に、「魔力を広げて」みる。これだけではただ魔力出してるだけだ。これに意識を集中させ、認識を変える。
・・・なんも起きねぇな。
途中緑葉薬草を少し見つけ、リュックに入れていると先ほどと同じ感覚。そっちを見ると特になにもない。
いや、あれは・・・虫・・・ハエ?
目を凝らすと、ブ~ンと羽音を立てながら動いている物が見えた。
あー・・・もしかして動きか?
先程の感覚を思い返す。たしかに、何かが振動というか動いているというか、握った手の中の物がモゾモゾとするような感覚だった。
もう一度試しながら歩く。
「お、鳥か?」
少し歩くと上の方に反応が。見れば何かの鳥類が、ちょうど木から羽ばたくところだった。
うん、これアレだ。円だ。
一瞬便利だと思ったが、疑問が湧く。前提として「魔力を範囲的に出している」わけだが、普通魔力というのは状況や差はあれど「基本的に感じ取れるもの」だ。動いているものを察知できるとして、これ相手側からはどうなのだろうか?
そういえば、初めのトン・ラビットもさっきの鳥も、なんかちょうど見つけたタイミングで逃げられたけど・・・あれ。もしかしなくてもこれ相手にも何かを感じさせたりするのでは?
そんな疑問はすぐに解決することになった。
2メートル程前方に2つ、右方向に1つ反応があった。前方の気配は俺の方向に向かい、右の気配はすぐに遠ざかった。うん、これバレてるわ。
前の方からはお馴染みのゴブリンが2匹。どちらも武装してこちらに走ってくる。
こちらも走って向かい打つ。片方のゴブリンの振り下ろされる剣を腕ごと斬り落とし、その剣でもう片方のゴブリンの額を貫き、残った方は蹴っ飛ばす。
片腕を失い、蹴っ飛ばされたゴブリンは案の定逃げて行ったので、ショートソードをしまい、剣の突き刺さったゴブリンの耳を切り取る。
斬られた腕からの出血の跡がはっきりと残っており、追跡は簡単そうだ。
とりあえず、動いているものを察知出来るようなので、魔力を出しながら歩いた。
しばらく歩くと前方から数匹の反応があった。ゴブリンの集まりも近そうだ。
にしても、これ疲れるな。まぁ魔力をずっと出しながら歩いてるんだから普段より疲れるのは当たり前なんだが。
と、特別速い反応が1つ。
「ッ!!」
咄嗟に身体を反らし、それを避ける。後ろの木に刺さったのは矢だった。
アーチャーかよ。
ゴブリンは基本的に道具を使う。人型として、そして自分の知能、身体能力として無理の無い範囲に使用可能な物すべてだ。当然ながら弓も使える。ただ弓は素人がホイホイ扱えるものでもない。身体能力がバカ高いならまだしも、ゴブリンの筋力ではそれを補いきれない。
そして、生きていく上で経験を積み、技術を付けていくと、剣にしろ弓にしろ、それぞれの武具の扱いに長けた個体が出てくる。それが以下になる。
ゴブリン・ファイター:重武器や体術に長けた個体、身体能力が高い傾向にある
ゴブリン・ソルジャー:剣や槍等の扱いに長けた個体、技術をより持つ傾向にある
ゴブリン・アーチャー:弓の扱いに長けた個体、索敵範囲が広い傾向にある
ゴブリン・メイジ:魔術を獲得した個体、全体数は少ない
更に熟練していくと、ファイターはモンクに、ソルジャーはナイトに、アーチャーはレンジャーに、メイジはソーサラーになる。
ここまで露骨に普遍的に進化する魔物はゴブリンを除きそうはいない。世界全体の生息数や繁殖力も含め、成熟前の駆除を強く推奨している要因がこれだ。
「アーチャーがいるってことはそこそこの集団か?」
経験を詰んだ個体がいるということは、同じ様な個体が、同じ集まりにいるのも不思議じゃない。
あまりに規模が大きいと流石に俺一人だと厳しいぞ。
再び飛んできた矢をしゃがんで避ける。もうゴブリン達は視認できる範囲にいる。広げていた魔力を抑え、その分を身体能力強化に充てる。一応不意打ち防止にはなるだろうから少しは残しておくか。
相変わらずボロくて汚い剣を持ったゴブリンが2匹、木製の棍棒を持ったのが1匹、小さい鎌(俺の草刈鎌の様なやつ)を持ったゴブリンが1匹迫ってくる。弓を持った個体はギリギリ視認できる距離で矢を構えていた。んー鎌が一番マシかな。
弓矢持ちがあちらにいる以上、距離を開けてやることもない。こちらもショートソードを握り走る。
矢も良い出来のものではないのだろう、魔力で強化した身体能力で十分捉えられる。3度目の矢をショートソードではたき落とし、返しの振り抜きでゴブリンの首元を狙う。
剣を縦に構え防ごうとするが、今の俺との筋力の差は抗いようもない。その防御の上から、刃を首にめり込ませ首を刎ねる。
・「レベルアップ」を確認しました。報酬として「ガチャポイント1p」を入手しました。
右の方から棍棒を振りかぶるゴブリンが来る。振られる前にがら空きの腹を蹴飛ばし、左から迫る剣を後ろ向きのままショートソードで防ぐと、首なしの死体を乗り越え、鎌を振りかぶって来る。その後ろからは更に矢が飛んでくる。
「チッ」
後ろの剣持ちと眼の前の鎌持ちから
その腕を軸に身体を浮かせ、未だによろめく鎌持ちに足払いをかける。倒れたゴブリンの頭目掛けてショートソードを振り下ろす。痙攣する身体の持つ鎌を奪い取り、思いっきり投げた。遠くから弓矢持ちの「ギャッ!」という声を聞いた後は、ちょうど起き上がったところの棍棒持ちのゴブリンに近づく。
「ギ、ギャ」
震えながらこちらを見る顔に獲物を振り下ろした。
周りを見渡し、魔力を広げてみるが、特に反応はない。
「終わったか」
ゴブリンの身につけているボロ布でショートソードに付いた血を拭き、耳を剥ぎ取る。初めに首を跳ねたゴブリンの頭が見当たらなかったので、その分は剥げなかった。
弓矢持ちのゴブリンの元に行く。胸元に深々とめり込んだ鎌に手を当てながら死んでいた。
弓を拝借し見てみる。やはり碌な手入れもされていないボロ弓だった。矢に至っては、木を削って何かの羽をくっつけて作った、なんちゃって弓矢だった。
「まぁ、使えはする、か」
矢の残りは4本。まぁ持っていくか。
耳を剥ぎ取り、全部まとめて木箱に放り入れて、先を進む事にした。
「つか、魔力を出し続けるの疲れるわ。やーめた」
流石に出しっぱは疲れるらしい。
ブゥゥゥゥゥゥン
とか言ってると何か音がした。咄嗟にしゃがみ見回すが何か分からない。魔力を広げてみる。
前方に反応があった。しかし見えない。疑問に思っていると気配は地面からだいぶ浮いてるのがわかった。
「木の高さ?」
視線を上げて探す。木々の葉っぱの間から何か見える。あれは
「ハチぃぃぃ!?」
デケェ!いや、知ってるぞあれ!
たしか『キラービー』とか言ったか。全長50センチ程の蜂である。顔つきは思いっきりスズメバチで殺意しか感じない。
そんなクソデカい蜂はこちらに向かって来ている。まぁ既に察知しているでしょうね。
とりま木箱を出して弓矢を取り出す。
取り付くにせよ、針で刺すにせよ、どちらしろ俺に向かって来なきゃいけないんだ。要は、俺に対してまっすぐの進路を取る時が必ずある。それを狙う。
矢をつがえ構えたは良いものの、やっぱクソデカいスズメバチフェイスは怖い。
怖いので、ほどほどの距離で矢を放つと同時に
急いで近づく。やはり即死ではないらしく、羽音を鳴らしながら地面で藻掻いている。
どうやったら死ぬ?とりま頭切り離せば死ぬか。
「でい!」
少しビビりながら、ショートソードの端っこでキラービーの首の部分を斬る。
頭を分離しても少し藻掻いていたが、すぐに羽音は止んだ。
どうしよ、これ。俺の知識では素材価値ないんだけど。
まぁでも一応持ってくか。木箱は空いてるし。
流石に使い道は無いであろう脆い羽と足を引っこ抜き、胴を切り分け木箱に押し込んでいく。毒針はちょっと怖いので、その辺の草で軽く包んで入れておいた。
「ここか」
さらに進み太陽が真上に登った頃、木々が開けた場所でゴブリンの集団を見つけた。20匹前後だろうか。木や草を加工し、建物を作る作業をしていた。
「チッ」
弓矢を装備しているのが3匹見えた。弓矢を装備しているゴブリンは十中八九アーチャーだと思って良い。
他にも武器を持った連中がいる。
(どうする?流石にキツイか?)
草むらの隙間から覗きながら考える。引くならまだアーチャーに気づかれていない今しかない。
この規模とここまでの戦闘を含め考えて、おそらく他にもゴブリンの探索班が出ているだろう。いつ戻ってくるかもわからない。全体の数も分からない。ならば。
(引くか)
そう決め、静かに下がる。その時
「ギャアウ!」
ゴブリンの1匹が物を運んでいる途中に転んだ。石ころにでも躓いたのだろう。当然転んだ拍子に持っていた物を落としてしまう。ここまでは別に良かった。問題なのは、転んだゴブリンの位置が、集団の中心地と俺の位置の間だったということだ。
物を落とした音に反応して数匹のゴブリンが視線を向ける。必然的に俺のいる方向に向くわけだ。そしてその視線を向けた中にアーチャーがいた。
「ギャア!!」
茂みの隙間から俺と視線を合わせたアーチャーは、叫びながら弓矢を構えだした。
「しゃーねぇ!!」
覚悟を決め、ショートソードを抜き放ち、突っ込む。
まずは転んでいるゴブリンだ。剣を突き立て殺し、すぐに死体を持ち上げる。
飛んでくる矢を死体で防ぎながら近づき、武装していないゴブリンの首を2つ刎ねる。
剣と槍を持ったゴブリンが3匹。武器を持っていないゴブリンも石を広い始めた。投擲用か。
死体で矢の射線を塞ぎながら動き回る。先に石を持ったゴブリンから片付けよう。
スキル『二度突き』
矢が突き刺さりまくった死体を投げつけ、近づこうとする武器持ちを牽制し、高速の突きで頭を貫く。そいつの持っていた石を広い、アーチャーに向かって全力で投げつける。
元々投擲用として用意されていた石らしく、投げやすく真っ直ぐ顔面目掛けて飛んでいった。
残りアーチャー2匹。
再び死体を拾い上げ、矢をガードしながら動き回る。
元々武器を持っていないゴブリンの方が多く、投擲要員が多かったので、同じ要領でアーチャーを撃墜していった。
ただのゴブリンの筋力から投げられる投擲の速度等たかが知れている。態々死体を盾代わりにする必要はもうなくなった。
投げられる石を避けながら、同時に振られる剣と槍を受け流し、背中を蹴りとばしながら、前のゴブリンに袈裟斬りする。
カキンッ
防がれたので、そのまま押しつぶそうとしたのだが抵抗された。足を止めるのは論外なので、一度引こうとしたところ、押し返しながら追い打ちをかけてきた!
「クッ!」
上段に振り上げてからの突き。そのまま横薙ぎに繋げられる剣を、弾きながら後ろに引く。
(コイツ、ゴブリンソルジャーか!)
いても不思議ではなかったが、まさかに本当にいたとは。だが、技はあっても、魔力で強化済みの身体能力とでは根本的に差がある。
剣を合わせながら、無理やり地面に抑え込む。そして足を鋭く蹴り上げ、腹部にめり込ませた。
鎧等を装備していないというのもあるが、基本的に軽いゴブリンの身体は、蹴りに持ち上げられ、宙に浮かぶ。
そんな状態でも剣を離していないのは見事だが、そこから反撃や防御に移れる程の能力はない。浮かんだ頭を掴み、力強く地面に叩きつけた。
・「レベルアップ」を確認しました。報酬として「ガチャポイント1p」を入手しました。
間髪入れずに投げられる石を弾き、避け、後方から繰り出される剣と槍を防ぐ。
素早く体勢を低くし、足を切りつけ、迫る槍を掴み、首を刎ね、頭部を刺す。その死体を持ち上げ、石を投げ付けてくるゴブリンに突っ込んでいく。
終始、派手に動き回りながら対応していくが、初めの突っ込んだ時から
武器持ちはもうおらず、石を投げるか逃げるかしかないゴブリンの殲滅は難しくなかった。レベルも更に1上がった。
最後の一匹を袈裟斬りにした所で、広げた魔力に反応が。
10・・・7,8匹?多分探索に出ていたゴブリン達が戻って来たのだろう。なんだかんだ時間もかかったしな。
アーチャーの持っていた弓矢とソルジャーの持っていた剣を集め、矢の本数は全部で12本になった。ソルジャーの剣は多少手入れされており、ゴブリン達が普通に使っているボロ剣よりは遥かにマシだったので、もらっておく。
草むらの方に駆け込み、少し離れた木に登り、上から様子を見る。
剣4、斧1,ナイフ2、武装無しで何か動物らしきものを背負っているのが数匹か。
自分たちのいた所の異常に気づいたのか、駆け足で集まってくる。
「ギャゥギャゥ!」
怒りから地団駄を踏みながら、剣を持った個体が何か指示を出している。他は散らばった角材を拾ったり、辺りを警戒したりしている。
気づかれるのも時間の問題か。
弓矢を構える。指示を出していると思われる剣を持った個体、おそらくはゴブリン・ソルジャーだが、こんなボロ弓じゃあ倒せるか不安だ。なので、先に他を狙うことにする。とりまナイフ持ちと斧持ちが横に並んで辺りを警戒しているので、そちらに矢先を向ける。
強く長く力を入れた状態を保てる程の弓ではない。首元を狙い早めに放つ。
ブス
「ギャッ!」
手前側のナイフ持ちに、狙い通り首の横に矢が刺さる。騒がれる前に素早く次の矢をつがえ、放つ。
ドス
「ガッ!」
今度は頭に突き刺さった。両方横向きに倒れ、手に持った得物を落とす。
流石に近くにいたゴブリンが気づく。同じくすぐさま次の矢を放ち、胸の辺りを貫いたが、騒ぐのを止めることは出来なかった。
「ギャッギャ!」
剣を持った1匹のゴブリンがこちらの方向を指し何か叫ぶ。それを聞いた他のゴブリン達は俺のいる方向に進んできた。
更に2匹を弓矢で仕留めたが、流石に俺のいる場所に気づき、武器持ちが接近し、他が石を投げてきた。
飛んできた石を避け、そのまま地面に着地。着地と同時に矢を1本近づいてきていた奴に放つ。が、持っていた剣で叩き落されてしまった。
「あいつがソルジャーか」
弓を捨て、自前のショートソードとゴブリンから奪った剣を構える。
その後方から投げられる石を避け、ゴブリン達に踏み込む。
スキル『二度突き』
踏み込みと同時に高速の突きを放ち、頭を貫く。すぐ横から振られる剣をもう片方の剣で受け止める。
剣を持ったゴブリンは4匹。流石に数が多い。
回り込んだ2匹から突きと薙ぎ。更にゴブリンの隙間から石が投擲される。
剣を受け止めた方のゴブリンに
・「レベルアップ」を確認しました。報酬として「ガチャポイント1p」を入手しました。
回転の勢いを利用し、押し飛ばしたゴブリンにショートソードを投擲。胸元に刺さったのを確認した後、腹を蹴り上げ宙に浮いている剣を掴み、他のゴブリンに投擲。
突き刺さり倒れたゴブリンの横で投げてくる石を剣で弾き、近くで転がっている剣含め3本、すべてを投擲。計4匹が倒れた所で最後のナイフ持ちが横から飛びかかってきた。
ガチャ画面を瞬時に操作し、ショートソードの「使用」を2度選択。遠くでゴブリンに突き刺さっていたショートソードを手元に顕現し直した。
いきなり手元に現れた武器に、ゴブリンは空中で驚愕したような様子を見せたが、構わず踏み込む。そもそもナイフとショートソードではリーチに差がありすぎるのだ。ハエ叩きの如く、振り下ろした剣で頭をかち割られながら地面に叩きつけられた。
他のゴブリンを見ると、ちょうど背を向け逃げ出した所だった。
「逃さねぇよっと」
近くに落ちた弓を拾い、矢を放つ。4匹に命中させた所で、周辺のゴブリン達の耳と剣を回収し、ついでにナイフも拾っておく。
投擲した剣を見たが、もう禄に使えなさそうだった。おそらくさっき回収した剣がゴブリン・ソルジャーのものだったのだろう。
ゴブリンの集まりがあった方に歩いて戻る。
矢に刺されたゴブリンは、2匹は首と目に矢を受け死んでいたが、もう2匹は胴体部分に矢を受けまだ生きていた。
1匹は這いつくばりながらも逃げようとし、もう1匹は後ずさりながら震えている。
震える身体を袈裟斬りし、這いつくばる身体を足で踏み押さえ剣を突き刺した。
・「レベルアップ」を確認しました。報酬として「ガチャポイント1p」を入手しました。
耳を切り取り、弓矢で先制して倒したゴブリンの元まで戻ってきた。
耳とナイフを回収して、木箱に放り込む。
見渡すと、こいつらが持って帰ってきた物が置いてあった。
トン・ラビットの死体が2つと大きめの茶色いネズミの死体が3つあった。
たしか・・・フット・ラット・・・だったか?50センチはあるネズミだ。ゴブリンと同じく害悪魔物として討伐
「討伐証明部位は尻尾と足だっけ?」
因みに肉や毛皮は衛生上、価値はなく。骨も脆く価値はない。つか、単価はゴブリン以下だった気が・・・。
剥ぎ取りの意欲が削がれながら、一応尻尾は剥ぎ取る。
トン・ラビットはざっと見た感じ狩りたてで、不衛生さは確認出来なかった。棚ぼた~ってことで木箱に入れる。
一度魔力を広げて見るが特に目立った反応はなかった。
「よし、飯にしよう」
もう昼過ぎだ。スキルのおかげで疲れはしないが、腹は減る。後、まだ探索に出ているゴブリンがいるなら帰ってくるのを待ちたい。
ということで、ガチャの「水」で手を洗い、ゴブリン達が木で作ったであろう椅子っぽいものに腰掛け、リュックから今朝買った黒パンと干し肉を取り出す。
どれを食べよう?オーカウはラノの店で食った時美味かった。干し肉でも試してみるか。
早速一齧り。
「んぐ・・・かてぇな」
干し肉。まぁコンビニで買うビーフジャーキーの様にはいかないか。しかし、味はそこまで悪くない。寧ろコンビニ産のそれよりもずっと濃い塩気だ。
黒パンも一緒に齧ると、味のない黒パンと合わせてちょうど良い感じになった。ただ口が乾くな。
革袋から水を飲む。
潤した口内にまた硬い干し肉とパサパサの黒パンを入れる。噛みほぐし、飲み込み、水を飲む。この繰り返し。
ガジガジガジガジハグハグハグハグ
ガジガジガジガジハグハグハグハグ
「ゴックン。他の魔物は来なかったな」
腹も膨れた所で、立ち上がりもう一度周囲を確認する。
帰りの時間も考えるとそろそろか。
帰るとしよう。
ガチャスキルが闇鍋なんだが・・・ KT蛇 @asahebi
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