第8話「捗る~」
ギルドで全財産を見せつけながら「何か依頼をおくれ~」と言ったら、Gランクに勧められる依頼は実入りが少ないので、ゴブリンでもなんでも討伐してランクを上げろ。と言われた。「てめぇみたいなのをGランクにしておくのはこっちとしても願い下げだから、とっととゴブリンの耳30枚持って来い」だとさ。
そんなわけで再び森の中、午前中に目を付けてた場所まで来ている。
ザシュッ ザシュッ
「あいあむ、じょそうきっ!」
緑葉薬草の群生地だ。見つけたものの持って帰る事が出来なかったので、枯れ葉や木の枝を被せて隠しておいた。
擬似的なアイテムボックスとリュックを手に入れた俺に、もはや遠慮などない。薬草もその周辺の雑草もまとめて刈り取っていく。
「ふんふ~ん♪」
しかしガチャアイテムの草刈鎌が良く切れる。流石、良品質の鎌だ。サクサク切れるので楽しい。あっという間に刈り尽くしてしまった。
「そんじゃまぁ、探索の続きと行きますか」
換金できそうな素材、そして主に魔物を求め、どんどん深くに進んで行くことにする。
途中キノコや木の実を発見したが、生憎と使えるものか売れるものか判別は出来なかったので、とりあえず適当に採取して木箱に入れておいた。
「おお!?これ知ってるぞ!」
『レイスマッシュルーム』
広く分布する食用の白い茸。
・纏まって自生するため、多く収穫される。
ガチャでも出てきた白いなめこの様なキノコを見つけた。それも大量に。どうやらまたまた群生地に当たったらしい。
わざわざ抱えて回るのは面倒なので一旦木箱を置き、しゃがみ込み近い所から採り入れていく。
木箱から数メートル程離れた所で大体採り終えた。
さて、今持ってる分をしまって終わりにしよう。そう思い、立ち上がり振り返る。
フガッ フカッ
「・・・」
大きいイノシシが俺の木箱に顔を突っ込み、体ごと木箱を揺らしていた。
黒い毛に覆われており、俺の腰よりも高いイノシシだ。
「・・・」
揺らすたび木箱の中からは勢い余って木の実やらがこぼれ落ちる。既に地面には木箱から出たあろうものが散らばっていた。いい加減認めよう。
こいつは俺の集めたものを食い散らかしているのだ。
「なにしてくれとんじゃこの毛玉があああああああ!」
激昂。
ショートソードを抜き、魔力を滾らせ、憎き毛玉に襲いかかる。
ギーーーー!!
木箱から顔を外しこちらに敵意を向けてくる。出てきたのは顔の中央にある、白く大きな牙。その外見で判断する。
『バルトボアー』
嗅覚に優れた雑食の猪型魔物。牙に要注意。
よくいるイノシシだ。攻撃性もあり、よく狩りの対象になる。
俺の接近に対し、威嚇とともに突進してきた。
はええ。
キンッ
ショートソードと牙がぶつかり合い金属音を鳴らす。
「ッ!!!」
重!
押し負けるのを察知し、退きながら横に受け流す。
即座に方向転換し、再び牙を向けて突進してくる。今度は冷静に見極めて、すり抜けるように避け、避けざまに斬りつける。が、毛皮に阻まれ傷は付けられなかった。
「チッ」
どうやら今の装備で、ただ攻めるだけでは効果的なダメージは与えられないらしい。そう判断し、頭を切り替える。
どうするか。
数瞬思考を回した所でバルトボアーがまた突進してくる。今度はもっと速い。おそらくスキル『チャージアタック』だろう。回避は不可。
一瞬でガチャの「水」を選択。10リットル全てを俺とバルトボアーの眼前に顕現させる。
流石に面食らったのか、驚いた身体の動きと水で突進の威力を殺され、少しもたついた。その隙に「木串」を左手の中に顕現させ、ショートソードを放り投げ接近する。
近づく俺を認識したバルトボアーは、牙で雑に投げられた剣を弾き、そのまま牙で俺を刺そうとする。その牙をスライディングの要領で避けながら、左手をバルトボアーの目に目掛けて振る。
ギャーーーーー!!
串を目に突き刺されたバルトボアーは奇声をあげながら暴れ、俺に攻撃しようとしてくる。振られる牙を転がりながら避け、右手を振る。
「木串」の「使用」を2回連続で選択し、バルトボアーの目に突き刺さったままの串を一度消し、振られる右手の中に再び顕現させる。
ギャーーーーー!!!!
両目を失ったバルトボアーは、痛みと視覚を失った動揺でその場で暴れている。
起き上がりついでに、
粘性の強いテゴスタランチュラの糸に足が絡まり、たまらずバルトボアーは横向きに倒れた。
倒れた頭のすぐ近くの木に向かって走り、勢いそのまま木を登り、倒れたバルトボアーの頭上にジャンプする。
今度は、巨人の戦斧を顕現させ、斧の刃の部分を自由落下と共にバルトボアーへと向ける。
首の辺りを断ち斬り、大量の血が吹き出る。
喉を斬られ、断末魔も上げれずに、身体を痙攣させ続けた。
「ふぅ」
周りを見渡し、他に危険がないことを確認する。
最後の最後で
バルトボアーは未だ血をドクドク流しながら身体をピクピクとさせている。まだ死んではないようで、立とうという意志からか、糸に絡まった足を動かしている。
さて、これどうしよ。といっても放置は論外だ。ただでさえ今日の成果をコイツに食われている。解体して売るのが一番なのだが・・・。
「え、ここから川まで運ぶの?一人で?」
乗せるソリも無ければ、引っ張る紐もない。
だりー。
しかし、今ココで解体というのは無理がある。血抜きもそうだし、毛皮の洗浄もだ。水が無ければはっきり言って無理ゲーにも程がある。
ガチャの「水」があるが、1つ丸々使ってしまったので、折角川があるのなら使い切りたくない。てか、アレだな今気づいたが、ガチャで水って結構貴重だな。これから先色々行くなら間違いなく使うし、環境によっては必需品になりうる。これはポイント交換も視野に入れて置くか。
「はぁ、しゃーねー」
未だ動く足を掴み、引っ張る。グッとくる重さにさっそく心が折れそうになりながらも、ズルズルと引きずっていく。
石や飛び出た根っこなんかにぶつかりながらも、できるだけ摩擦係数を減らすため枯れ葉や草花のあるところを沿って行く。額に汗が出てきた頃、まだコレが死んでいない事に気が付いた。
「セイッ セイッ」
遠慮なしに、綱引きのようなリズムで引く。石なんて気にするなー、根っこなんて気にするなー。
・「レベルアップ」を確認しました。報酬として「ガチャポイント1p」を入手しました。
「と、おっとっと!」
バルトボアーが事切れたらしく、レベルが上った。それと同時に、死んだ対象には使用できないスキルが強制的に終了して、色々感覚が狂って転けかけた。
「ちぇ、スタミナタンクが」
そう残念に思ったのだが、レベルアップでまたまた身体能力が上がったらしく、先程よりも高ペースで運ぶことが出来た。
川に辿り着き、とりあえす水に漬ける。解体用ナイフで腹を裂き、更に血を流す。
木箱を出し、中身を洗ってから気づく。これ全部入らないんじゃね?と
「まぁー入る分までバラすしかないか」
吊るした血抜き程抜けては無いが、時間もない。さっそく裂いた腹にナイフを入れていく。とりあえず内蔵全般は取り除いていくが、まずは
「んー・・・たしか、心臓の辺りだっけ・・・あれ?ん、どこだ?んー?」
数分グチュグチュと体内を漁っていると目当てらしき感触に触れる。
「お!あったあった、これか!無いかと思ったわ」
血だらけの腕で取り出すのは直径2センチ程の固形物。暗い青色をしたゴツゴツしたボール状の物体。「魔石」である。成体の個体ならあると思った。
優先した目標は手に入れたので、後は、食道から断ち切り消化器官を引っ剥がす。最後に肛門辺りごと切り取って離す。
次は肉だな。ざっくり切り分けることにしよう。適当に肉を斬り進め、ブロックにぶつ切りする。しかし、やはり全部は持って帰れないな。残念ながらどこの部位が高価かわからないので、肩や腿肉を取ることにする。
ナイフが普通サイズで、肉がデカいので何度もナイフを入れ、切り取る表面が荒くなるが今更である。そもそも散々引きずって来たので、すでに石やらで傷がついたり内出血で肉の状態が落ちてきている。
肉を不格好に切り分けた後は、毛皮だ。単純に剥ぐのだが、これが面倒くさい。おそらく時間的に全部は無理だろう。仕方ないので半分だけ頂くことにする。
後は顔の所だ、とりあえず牙を頂く。少々雑に切り取る。
木箱に先に皮を入れ、次に肉を入れる。隙間に牙を入れると案の定ほぼいっぱいになってしまった。
「あーもう時間が」
まぁ実質昼過ぎからだったので仕方ない。臓器の方から心臓だけ取り、中の血を洗い、木箱に押し込む。
本当はまだまだ欲しいが持っていけないのはしょうがないので、後は放置する。
「ひぃーもう夕方かー」
街頭や建物の光などないので、かなり暗くなってきた。早く帰らねば!
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