第19話 長い一日②


 朝のラリー方式の勉強により快適な学習が出来た。


「まさか勉強で汗を流すことになるとは思わなかったよ」


「どう? 楽しいでしょ?」


「凄く楽しい。こんな勉強ならドンドンやりたいよ」


「それは良かった。でもやりすぎは逆効果だからまた今度ね」


 時刻は十時を少し回った頃だろうか。

 眠気は一気に吹っ飛び、眼は冴えていた。


「それにしても兼近さんはまだ寝ているのかな? 逆に心配になるくらい」


「まぁ、いつもそんな感じだから」


 朝方まで生配信をした後ならまだ眠りが深い時間だろう。


「お昼としてはまだ早い気がするけど、この後はどうしようか? 勉強する?」


「いや、お昼まで休憩をしよう。今日は長いんだ。立て続けに勉強するのも良くない」


「それもそうね」


「少しシャワーを浴びさせてもらうよ。速水さんは適当に休んでいて」


「分かった」


 軽く流れた汗を流してサッパリした俺は部屋に戻る。

 すると速水さんは横になって寝ていた。


「寝ちゃったか。まぁ、早起きしたら眠くなるのも仕方がない。俺もシャワーを浴びたら急に眠くなってきたな」


 少し湯冷めをするため、横になった途端に眠気が一気に押しかけた。


「やばっ。もうダメかも」


 そう思った俺はいつの間にか眠ってしまう。

 次に目を覚ましたのは兼近さんの呼びかけであった。


「冴島くん。起きて。冴島くん!」


「兼近さん?」


「もう十二時だよ。昼まで寝ているって流石にだらしな過ぎ!」


「別にずっと寝ていた訳じゃないよ。兼近さんこそ朝から遊ぼって言ったくせに今頃来たの?」


「しょうがないでしょ。生配信が長引いちゃったんだから」


「そうだ! 速水さんは?」


 俺は飛び起きて部屋を見渡す。


「私が来た時には居なかったよ?」


「帰ったのかな?」


「知らない。それよりお腹空いたよ。何か作ってよ」


「寝起きで何か作るのはちょっとしんどいかな」


「えー。じゃ、私のお昼ご飯はどうなるの?」


 兼近さんは俺よりも自分のお昼ご飯が心配のようだ。

 冷蔵庫の中身は何があったかな。簡単ですぐに出来る食材があればいいのだが。

 そんな時だ。速水さんが部屋に戻ってきたのだ。


「あ、兼近さん。来ていたんだ」


「うん。速水さん。どこか行っていたの?」


「うん。ちょっと買い物」


 速水さんの手には袋が握られていた。


「それは?」


「皆でたこ焼きパーティーをしようと思って」


「タコパ? いーね! やろうよ」


 乗り気の兼近さんに対して俺は少し懸念点があった。


「えー。タコパってうち、たこ焼き器無いよ?」


「え、うそ。私、やらかした?」


「あ、私の家にたこ焼き器あったかも! ちょっと待っていて」


 兼近さんは自分の家に戻っていく。

 そして五分後、たこ焼き器を持って兼近さんは戻ってきた。


「持ってきたよ。これでタコパしよう!」


「兼近さん。これ、ジャンボたこ焼きを作るやつじゃない?」


 でかい穴が二つだけのたこ焼き器だ。

 ビックサイズを作るネタ要素満載のものである。


「しょうがないじゃん。これしかないんだから。まぁ、たこ焼きには変わりないからさっさと始めようよ」


 俺の部屋にて三人による巨大タコ焼きパーティーが始まる。

 普通のたこ焼きとは違い、焼くのに時間がかかり難しい調理に悪戦苦闘した。

 それでも兼近さんと速水さんで行ったタコパは少し楽しかった。

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