第7話 お腹空いた
「そういえばご飯っていつもどうしているの? 自分で作っている訳?」
「一人暮らしをしているんだから当然だろ」
「へー凄い。料理できるんだ」
「まさか、兼近さん。自炊しないの?」
「うん。いつも買ってきたものを食べている」
まぁ、あの部屋の状態を見れば自炊をしている気配は皆無だろう。
自炊をする前にゴミを何とかした方がいいと思うが、またそれに関して言えば怒るんだろうなとそれ以上、言わなかった。
「それ、大丈夫? 栄養バランスや金額的に」
「最近、気にしているんだよ。食べない日があったりして調整しているから何とかなっているって感じ」
その時だ。グゥーと兼近さんの腹の虫が響いた。
「ちなみに今日は絶食デーなんだよね。あー、お腹空いた。でもコンビニ弁当は太りやすいから我慢だな」
兼近さんの食生活はかなりズボラだった。
こんな生活を続けていたらいつか倒れてしまうに違いない。
「兼近さん。ちょっとそこで待っていて」
「う、うん?」
見かねた俺は台所へ向かう。
数十分で作ったパスタ料理を兼近さんの前に出す。
「食べていいよ」
「いいの? てか、美味しそう。冴島くんって何でもできるんだね」
「家が田舎で野菜農家だから食材は実家から送ってもらっている。料理は小さい頃から手伝わされていたから」
「いただきます!」
夢中になってパスタを頬張る兼近さんはまるでハムスターのように見えた。
「美味しい。何これ! お店の料理みたい」
「そう、それは良かった」
「冴島くんの料理に私の胃袋が掴まれちゃったよ。ねぇ、定期的に作ってよ」
「作ってって作るのはタダじゃないんだぞ。食材や人件費だって手間が掛かっている訳だし」
「なら食費を出す! 私に出来ることがあれば雑用もする。それならいいでしょ?」
「うーん。うん?」
兼近さんの食生活を見ると心配になるレベルだ。俺が作ってあげる方が健康的なのは明らかだ。だが、お金を出すと言われれば悪くない話でもある。
「毎日は無理だけど、気が向いたら」
「ありがとう。冴島くんのようなリア友が居てくれて私、幸せかも!」
満面の笑みを見せる兼近さんが眩しい。
その笑顔をずっと見たいと俺は心の中で思った。
「ちなみに私の好物は寿司だよ。後、焼肉ね」
「それ俺が作ると言うより買うか店に行くようなやつだよね?」
「それもそうだね。本当は料理系の動画も配信したいけど、私には無理なコンテンツでさ」
「兼近さんは動画のことしか頭がないのか」
「私はいつでも動画のことを考えているよ。ネタになりそうなものは常に考えているかも」
「やっぱりそっちの世界については分からん」
そう言って俺はそそくさとベッドに潜り込んだ。
「あれ? もう寝ちゃうの? まだ十八時前だよ?」
「仮眠だよ。数時間寝て頭をスッキリさせた状態で勉強をしたいんだ。食べたならもう帰ってくれ。俺は寝る」
「そっか。じゃ、私はそろそろ帰るよ。おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
兼近さんが帰った足跡を聞いた俺は静かに瞼を閉じた。
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