第54話 幕間~ブレーカーS&M 幸子~
私は紫の聖女こと二階堂幸子。容姿は自分で言うのもどうかと思われるかも知れませんが、上中下の3段階ならば上だと言われるほどの可愛い女の子です。(ちょっと恥ずかしい)
背は少し低いけど細身で出るところはちゃんとあり、サラッと流れる長い黒髪で細目の眉毛とバッチリした目。そして鼻筋が通っていて口は少し横に長くプルンとした少し厚めの唇が清楚な感じの私に色っぽさを付け加えてくれるの。それから大きめの黒縁の眼鏡を掛ければ魅力的な少女の出来上がり。
そんな私は小学生の頃から周りの男子から憧れの的として見られ崇拝者が出るほどだった。
「幸子さん、今日もお綺麗ですね!」
「ありがとう」
「幸子さん、靴が少し汚れてます。この僕のハンカチでお拭きします!」
「ありがとう」
「幸子さん、あそこに水溜まりが!私が覆い被さり道になります!」
「ありがとう」
私が通学すると毎日その崇拝者達が私に声を掛けエスコートしてくるの。そして確か小学2年生の時だったかしら?それは梅雨の時期で雨が降ったり止んだりと、通学路によく水溜まりがあったの。すると崇拝者3号がすかさず私の前に現れその水溜まりに覆い被さり自らを道と同化させエスコートしたの。それも数メートルおきにある水溜まり全てに対して。
さすがに最初の頃は遠慮していたの。でも何度も「どうか私を踏みつけてお通りください!」と、水溜まりで多少ブクブク言ってたけどその真剣さが伝わり私はそれからお礼を言って彼を道と思ってその上を歩くようになった。そして今は数メートルおきに彼の背中を踏みつけ歩いて行く。たぶんこの時ね。私の中にある魔物が住み着いたのは。
それからの私は雨の次の日を楽しみにする可憐な少女となったの。
「幸子さん、水溜まりが前に!私を踏みつけ渡ってください!」
「ありがとう」
「あっ!またあそこにも!」
「ありがとう」
(うふふ、なにか気分がいいわね)
「おっと!こんなところにも!」
「ありがとう」
(ぐふふふふ、この足で踏みつける感覚はたまんねーな!私は女王様なのよ!)
はい、私の中の魔物が現れましたーー!
それからの私は表はお淑やかな少女で裏では魔物使いの少女として生活していた。それは楽しくもあり苦しいものでもあった。
(はぁ、もう隠れて楽しむのには疲れたわ。でもこんな性格だと知られたらハブられそうで私怖いの‥‥‥)
そんな生活が2年ほど続き私が4年生になった時に転機が訪れた。
「今日は転校生を紹介しますね。さあ、篠崎さん、自己紹介してください」
その先生の横に居たのは私より少し背の高い長い黒髪をお団子にしている可憐な女の子だった。
「あ、あの‥‥私は篠崎乙葉です。わ、私は精神的なイジメはダメですが、肉体的なイジメは大好物です。よろしくイジメてください」
「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」」
その言葉にクラスメイトは押し黙り、先生は口をポカンと開けて固まっていた。そして私は頭上から雷が落ちたかのように痺れていた。
(お、お前‥‥‥イカした女だな!)
それからの私は全てをさらけ出し思うがままに生きてきた。相棒の乙葉と一緒に。そしてその私達に呼び名がついた。
『ブレイカーS&M』
(なかなかイカした呼び名だな)
それはとても楽しい日々だった。そして充実した小学校を卒業し、相棒と一緒の中学へ行くことになりまた2人で楽しく過ごせると思っていた。だがその日々が突然奪われた。7人の聖女の1人として異世界に転移したからだ。
その転移は私を含めて7人で幸い乙葉が一緒だったので良かったが、後の人達は挨拶程度で話をしたことがなかった。だから私は乙葉と2人で居ることが多かった。
「幸子、私は怖いよ。家に帰りたいよ‥‥」
「乙葉、私も怖い‥‥‥」
突然の出来事に私と乙葉の心は弱っていた。それから異世界の人や他のクラスメイトからの話で徐々に状況が判ってくる。
「幸子、ここって魔物が居るんだって。それも人型で人を拐って襲うゴブリンとかオークとかも居るの。うふふふ」
「乙葉、私の能力は雷で鞭を作れるんだ。それも痺れる鞭だぞ!ぐふふふ」
そして私達の心は復活し、溢れんばかりの『期待』で胸膨らんでいた。
(家に帰りたいって言ってた?はん?ここが私達の家だ!)
そして私は今、防御壁の上で私の紫電で丸焦げになっている狂暴種を見下ろしている。気分の悪さとか嫌悪感があるかと思ったけど私は冷静だった。(周りの聖女も平気みたいだし、神様かなにかが私達に精神が耐えられるようにしてくれてるのかもな)
そんな私は思った。
(この世界すげー!私の能力すげー!早くこの足でひれ伏す魔物を踏み潰してー!ハイヒールを探してー!)
そして私は反省した。
(丸焦げはイカンな。今度から痺れて動けないようにしないと踏みつけれないもんな)
最後に私は右手を天高く上げ吠えた。
「我が人生ここにあり!」
7人の聖女プラス1 七転び早起き @tanamanbo
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