この素晴らしい探索者に決闘を!

「でさー、そんときのれんれんの慌てた顔がホント最高だったんだよ!」

「お、おう」


 このまえあったれんれんとのことを話すと、カズマはなぜか微妙そうな顔をしていた。


「? どったの? 今の私はちょっと上機嫌だからどんなことでも答えて上げるよ」

「いや、お前あんなことあったのに大丈夫なのか?」

「へ? なんかあったっけ?」

「あ、もういいです」


 ん~? ホントになにかあったかなぁ......あんなことってなんだろ。


「てかれんれんって誰? 男? 女?」

「お、なんなら呼んでこよっか?」

「へ、できんの?」

「まぁうん」


 どうせ門の創造で一瞬だしね。


「じゃあ頼むわ、お前の元仲間ってのがどれだけイカれたヤツか気になるし」

「あはは、まあ私と同じぐらいかな? それじゃ行ってくるねー」

「お前と同じ......それ大分やべえやつじゃねえか!?」


 後ろから聞こえてくる声をガン無視し、門の創造で王都に飛ぶ。

 さーて、れんれんはいるかなーっと。


「たのもー」


 れんれんがいた店の扉をドカッと蹴り開けて名乗りを上げる。


「あ? っせーな......またお前かよ」

「またってなにさまたって、折角私がきてあげたっていうのに」

「営業妨害だ、用がないなら帰れ合法ロリ」

「あ‘‘?」

「お? 事実を言っただけじゃねえか」


 おめえ今言ってはならないことをいったな?


「よろしい、ならば戦争だ」

「よし乗った、こっちはハスター様がついてんだ。こんなちみっこ一瞬で信徒にしてやんよ」


 門の創造でカズマ達の前に戻ってきて、テーブルなどをどかして即席のバトルフィールドを作る。


「あ、サツキにこの前のイカした名前の人じゃないですか」

「めぐみん、こいつは私達『低身長コンプレックス同盟』に対して戦争を仕掛けてきたんだよ」

「なるほど、援護はいりますか?」


 流石めぐみん、理解が速い。


「いや、私自ら鉄槌を落とす」

「わかりました。けちょんけちょんにしてやってください」

「任せろ」


 今の会話を聞いていたアクア様は何かを思い付いたらしく、冒険者達を集めだした。


「みんなー! 今から魔王軍幹部を倒した英雄サツキとよくわかんないイケメンがケンカするわよーー!!!」

「なに!?」

「ほう、あのあんちゃん度胸あんな」

「さて、どっちが勝つかしら!? 一口900エリスから!!」


 うわ、人のケンカで賭け始めやがったよあの駄女神。


「俺はサツキちゃんに一票!」

「俺は五票だ!!」

「いた、おれはあっちのあんちゃんに賭けるぜ! 男見せろーー!!!」


 しかもみんなノリノリじゃん。まぁいいけど、こっちの方が盛り上がるし。


「よしれんれん、丁度いいからこの際どっちが上か白黒ハッキリつけようじゃん」

「ハッ! おもしれえ、いいぜ! やってやろうじゃねえか!」

「お互い呪文は無し、代わりにステータスは私と同じぐらいにしてね」

「おう、フェアに行こうじゃねえか」

「負けた方が1日奴隷ね」

「へぇ、後で後悔すんなよ」

「そっちこそ」


 場がいい感じに暖まってきた所でアクア様がスターターをする。


「それでは両者、準備はいいですね?」

「もちろん」

「おう!」


 行くぞれんれん、加護の貯蔵は十分か?


「レディー......ファイ!!」

「「死に晒せこのクソ野郎が!!」」


 先行は私。まずは見栄え意識のパンチ。


「あ」


 うっそでしょ100ファンした!?


「あうっ!」


 落ちていた雑巾に気づくことができず、ツルーンと滑って地面に打ち付けられた。


「うぅ......っつぅ」

「ぷっ」


 痛い......顔から、顔からいった......ビターンって......2点ぐらい受けた......。

 痛む顔を擦りながら上を見ると、口を押さえたれんれんと目があった。


「ぷっ、くくく......あっはっはっは!! お前やっぱ面白すぎるだろ!」

「ぐぬぬぬ......」


 くっそなんも言い返せない。


「くっ、ふふ......ふぅ、よし落ち着いた......行くぞオラ!」

「やばっ」


 顔ビターンから体勢を立て直せず、れんれんの蹴りが突き刺さる。

 しかもコイツマーシャルアーツももってるからめっちゃ痛い。8点ぐらい来た。


「いったぁ......」


 あっぶな......事前に張ってあった肉体の保護なかったらワンチャン一発KOされるところだった......。


「今の感触......お前肉体の保護張ってるだろ!!」

「しょうがないじゃん先に張ってたんだから! それにこれ一回張ったら解除できないんだもん」

「ちっ......何点ある」

「今の抜いて7点」

「ったく......しゃあねえな」


 許された。よかった。


「さて......こっちの番だよ!!」

「でた武道99とかいうお化け」

「路上柔術は最強!」


 使うのはサルト。これは回避もできないし使った後にノックアウト入るから便利なんだけど......こいつCON18あるんだよなぁ......まぁ普通にダメージ期待で行こう。

 判定は......68、98。よし成功! あっぶなぁ......99振っといてよかった......。

 ダメージ!


「っらぁ!」


 よっし5点最高点!!

 気絶は......。


「はぁ、いってぇなぁ......そうこなくちゃ!」


 ちっ、無事か。


「まだまだぁ!」


 また腰の入ったいい蹴りが飛んでくる。

 しかし、その蹴りはすんでの所で空を切った。


「っぶな!」

「ちっ、運のいいやつめ」


 今度はこっちのターン、またサルトで。

 くっそ6......あと1でクリッたのに!

 ダメージは1点。くっそダメボ-1d4が超キツイ。

 気絶も......ナシ。

 れんれんの攻撃。

 またキックが飛んでくると思い身構えていると、予想外のことが起こった。


「ーーーーっ!?!?」

「ぷっ」


 なんと蹴り始めの足の小指を机の足にぶつけたのだ。

 うわぁ痛そう。でもそれ以上に面白い!!


「ぷっ、くくく......あっはっはっは!! アンタやっぱ面白すぎ!」


 さっき言われたことをそのまま言い返したやると、みるみる顔が赤くなっていく。


「ぐぬぬぬ......」

「ふふ、ふぅ......よし」


 弱ってる今をつく!

 あ、0点。うわ超キレイに受け身とってる。

 くぅ、圧倒的にパワーが足りない......いつも使ってた日本刀が欲しい......。


「今度こそ!」


 先ほどの失敗をものともせず、れんれんが鋭い蹴りを放つ。


「らぁ!」

「かっ......はっ............」


 その蹴りはお腹にクリーンヒットし、私の小さなは綺麗な放物線を描き飛んでいった。

 やば、意識が......。

 ふっと、私の意識は闇に沈んだ。


□■□■□■□


「はぁ!? お前教祖なのか!?」

「はは、まぁな。こっちの世界でもハスター様の素晴らしさをドンドン広めて行くつもりだ」

「ふん、たかが新興宗教風情が我がアクシズ教に敵うわけないじゃない! そのハスなんちゃらより私の方がスゴいに決まってるわ!!」

「お? いくら女神様といえど彼の黄衣の王を貶すのは許さねえぞ、なぁサツキ?」

「は、はい......ご主人さまの言う通りでございます......ぐぬぬぬぬ......」


 私は今、メイド服を着せられたうえ首輪に繋がれて文字通りコイツに手綱を握られた状態になる。

 なんという屈辱......明日絶対ぶっ殺してやる......。

 てか横の変態騎士、羨ましそうにこっちを見るな。私までそっち側だと思われるだろうが。


「おぉ、珍しくサツキがやりこめられてます。レアですね」


 ヤバい、めぐみんがちょっとかわいいかもみたいな目でこっちを見てくると、なんと言うか、こう、胸にクるものがある。ヤバい。

 カシャカシャカシャカシャとカズマの手元にある記録結晶がフラッシュをたいている。


「ちょ、バカ、やめろって......撮るなよぉ」


 顔がまっかっかになってあたふたとしてしまう。

 うぅ、恥ずかしい......。


「......なぁレン」

「なんだ?」

「こう、いつも強気な女子が恥ずかしがってるのって......イイな」

「わかる」


 グッとサムズアップしあう2人。


「そ、そういうこと言わないでよ......」


 あまりの恥ずかしさに顔を手で覆うと、れんれんから命令が来た。


「ほらサツキ、顔を隠したらダメだろ?」

「うぅ、ぶっ殺す......絶対殺す......」

「はっはっは、そうやってればお前もかわいいのに」

「うぅぅぅ......」


 自分から言い出したことだから断れないし......もういっそ殺して......。


「......カズマ、その写真いくらですか?」

「ふむ......1枚5千エリスでどうだ」

「5枚買います」

「よし、交渉成立だな」


 なんか裏取引が行われてた気がするけどきっと気のせい。そうだと信じたい。

 ちなみに、今はレストランの個室にいるため私達以外に人はいない。それだけはありがたい。

 なんて思ってたら悪魔から指令が下った。


「うし、ちょっと散歩いくか」

「!?」


 フルフルと首を横に振りイヤだという意思を必死に伝えていると、手綱が引かれ、顔がれんれんの近くに引き寄せられる。


「敗者は1日奴隷、だろ?」


 そしてまさかの顎クイ、もう死にたい。だれか私を殺して。

 それからしばらく私達は町を散策させられた。

 その間私はれんれんの3歩後ろを羞恥に悶えながら歩き、見せ物にされた。


「ん、このアイス超上手いな......お前も食うか?」


 ある時、れんれんが急にそんなことを言い出しこちらにスプーンをつき出してきた。

 乗ってるのはシンプルなバニラアイス。

 だけど普段から私の料理を食べなれてるコイツが美味しいっていうからにはよっぽど素晴らしいんだろう。


「は、はい、欲しい......です」

「よく言った。ほれ」


 そう言い口元にスプーンを寄せてくる。


 こ、コイツまさか私にあーんさせる気か......!?

「どうした? いらないのか?」


 ぐぬぬ、私が超甘いもの好きだって知ってて......しかも超いい笑顔しやがって......。


「あ、ん」


 恥ずかしさをなんとか耐えきりアイスを口に入れる。


「......!」


 うそ、なにこのアイス......美味しすぎる!!

 ヤバい、めっちゃ美味しい、もっと食べたい......

 そう思いれんれんに視線を向けると、すっごいニヤニヤした顔で見返された。


「もの欲しそうな顔しちゃってまあ......ほら、おねだりしてみなよ」

「はぁ!?」

「ほれほれ~」


 スプーンに入ったアイスを私の前にちらつかせ揺さぶりをかけられる。


「あむ......んー美味しい!」

「あ......」


 もうちょっとで食べれるって所でスプーンがコイツの口の中に消える。


「ほらほら、はやくしないとなくなっちゃうよ?」

「うぅ......」


 恥ずかしさと物欲を天秤に掛け......わずかに物欲が勝った。

 だって超美味しかったんだもん!


「ご、ご主人様......私に......もっとソレを下さい............うぅぅ」

「ーーっ! はい、どうぞ♪」


 また口の前にやってきたアイスにパクっと食いつく。

 うー、美味しい!! けど悔しい!!!!


□■□■□■□


 後に彼はこの時のことをこう語る。


「あの時はこう、ゾクゾクっと来たっていうか......なにかに目覚めた瞬間だったね」


 また、この時のサツキを見かけたものを中心に「サツキちゃんをいぢめたい会」が新たに設立された。

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