この素晴らしい探索者に再会を!

「……ここは」


 目が覚めると、そこはいつものめぐみんズルームだった。


「っ!? 目が……目が覚めたのですね!?」


 その声を聴いて横を見ると、椅子に座っていためぐみんが立ち上がり涙目でこちらを見ていた。かわいい。


「めぐみん……大丈夫だった?」

「はい! おかげさまで」

「そっか、よかった」


 あそこまでやって何かしら後遺症とか残ってたら恥ずかしいし後味悪いからね。


「サツキの方こそ、大丈夫ですか?」

「もちろん。ちょっと懐かしい夢を見ていたんだ」


 性悪邪神の粋な計らいでね。


「へ~、どんなのですか?」

「詳しくは話せないけど、‘‘私‘‘の始まりについてのことをね」

「むぅ、折角なら全部教えてくれたっていいじゃないですか」

 

それは……まだダメ。私はめぐみんに嫌われたくはないからね。


「ふふっ……さ! 今日のご飯作ろっか!!」

「はいっ!」


こうして、また私たちの日常は再開した。


□■□■□■□


 ある日、私がいつも通りテレポート屋の仕事に行こうとするとめぐみんがついてきたいと言ってきた。


「まぁいいけど、なんで?」

「私はこれでもアークウィザードです。テレポートという高位魔法には当然興味があります」

「へー、めぐみんって爆裂魔法以外にも興味を持てたんだ」


 ちょっと、いや大分意外。


「なんですかその言い方は。私だってそれぐらいします」


 マジすか。めぐみんなんか悪いものでも食べたんじゃ?


「まぁ当然一番は爆裂魔法に決まり切っていますが」


 あ、よかった。いつものめぐみんだった。


「それではいってみよー!」

「おー!」


□■□■□■□


「ありがとうございました!! お代は8,000エリスになりまーす」


 テレポート屋をしてる時は、全力でかわいい自分を演じる。

 こうするとばか……いろんな男の人が利用してくれるのだ。


「はいよ、ごくろうさん」

「はい! またのご利用、お待ちしております!!」


 ニコ♪

 お客さんの頬が紅く染まる。

 はいいっちょあがり。常連客ゲットだぜ。

 お客さんが遠くにいくまで待って、それを確認したらふっと笑顔を解きめぐみんに声を掛ける。


「とまあこんな感じ。どうだった?」

「さ、サツキはすごいのですね」


 ふふーん、もっと褒めるがよい。


「さっきまでとはまるで別人のようです」


 でしょでしょ? さっすが私の変装80、いい仕事してくれる。

 機嫌のよくなった私はめぐみんをデートに誘ってみることにした。


「せっかく王都に来たんだしちょっとぶらぶらしていかない?」

「お、いいですね。私魔道具店に行きたいです」

「よしきた。それじゃあレッツゴー!」


 王都で一番いい魔道具展に突撃だ!!

 途中おいしそうなジュースが売ってたからそれを買って2人一緒に飲みながら歩くこと数分、目的の店が見えてきた。


「……このジュースおいしいですね」

「わかる。何使ってんだろ……私でも再現できるかな」


 そんなことを話しながら店の扉を開ける。


「らっしゃっせー」

「!?」


 なにか、すごく聞き覚えのある男の声が聞こえたきがした。

 いや、きっと気のせいだよね。声が似てる人ぐらいどこにでもいるだろうし。


「おぉ~! みてくださいサツキ! どれも一級品ばかりです!!」


 めぐみんが私、感激! みたいな感じで歓声を上げる。


「あ? さつき……沙月? いや、そんなまさかな」


 ……なんかそんな声が聞こえた気がするけどそんなわけない。ないったらない。

 気にせずショッピングを続けよう。


「どう? なんかいいのあった?」

「えぇ、このヒヒイロカネ製の杖なんかとても……3000万エリス!?」

「これ、欲しい?」

「はい、欲しいで……い、いえ! 今の杖で十分ですので大丈夫です!!」


 めぐみんが気を遣ってくれてる……ういやつめ。


「店員さーん、これ」

「ちょ、ちょっとサツキ!? そんなの買ってもらうの申し訳ないですよ!」

「いいのいいの。宿貸してくれてるお礼」

「3000万も払ったら破産してしまいますよ!?」

「だいじょーぶだいじょーぶ」

「で、でも……」


 言い募るめぐみんの口に人差し指を当てて押しとどめる。

 ……ホントは唇で行きたかったけど流石に引かれそうだから止めといた。


「ここはお姉さんに見栄張らせてくれればいいの」

「は、はい……」


 よし勝った。そして買った。


「店員さーん、これちょーだ……」

「はいはい、かしこまり……」


 目が合う。見つめあう。硬直する。

 あーもうダメだわ。これ以上目を逸らせないわ。


「「なんでお前がここにいるんだよ!?」」


 私たちの声が重なった。でもお会計はしてくれた。ありがとう。


□■□■□■□


あの後、店を後にして一旦近くのカフェで話すことになった。


「あの、サツキ? この人は一体……」

「あぁ、紹介するね。こいつの名前は蓮ノ縁はすのぶち れん。あだ名はハスハスまたはれんれん」

「おい沙月、このロリっ娘は誰だ?」

「この子はめぐみん。紅魔族っていう魔法一族で爆裂魔法の使い手。あとかわいい」

「「ど、どうも」」


 2人に互いのことを紹介する。

 もうわかると思うけどこいつは私の探索者仲間で、多分一番たくさん一緒に事件を解決してる。

 超ベテランだし基本頼りになるんだけどひとつだけどうしてもヤバイ所があって……。


「時にめぐみん、今なにか宗教には入ってたりするか?」

「いえ、してませんけど」


 それがこれ。まぁ聞けばわかると思う。こいつ初対面の相手……いや初対面じゃなくても会うたびにこの誘いをしてくるから。


「だったら黄衣の王……ハスター様を信仰する気はないか? かの神は本当に素晴らしいぞ!!」


 ね? やばいヤツでしょ? こいつ職業「狂信者」なんだよ。


「やめときなめぐみん。こいつと関わるとろくなことないよ」

「そ、そうなのですか?」

「ふっふっふ、聞いて驚け! 今やこの王都の住民の内10分の1はすでにハスター教に改宗済みだ!!」

「うっそだろお前マジか」


 え、すごい。正直普通にすごい。

 だってこいつ私と一緒に死んだはずだからまだこっち来てから1か月たってないくらいでしょ? それでここまで広めたとか……え、ヤバくね?


「で、どうだめぐみん! お前もハスター様を信仰してご加護を得る気はないか?」

「か、加護とはどのようなものがあるのですか?」


 ちょ、ばかやめろめぐみん。


「それは神次第だが……私は一日につきPOWとSTRを1~3ずつ授かっている」


 こいつはなんと、本神公認の巫覡ふげき(巫女の男版)であり、地球上にいくつも存在するハスターを信仰する教団で知らない人はあんまりいないレベルの大司祭なのだ。

 こいつがいるとハスター関連の事件は特に何もせず解決したりするから結構便利だったりする。


「ぱうにえすてぃーあーるとはなんですか?」

「あー……まあ筋力と魔力みたいなもんだ」

「なんと! それはすごいですね」


 まずい、めぐみんの心が揺れている。


「ちょ、やめてよ。私のめぐみんを誑かさないで」

「私のって……今はこいつがお気に入りなのか?」

「そうそう。この子ほんっとかわいいんだから……渡さないからね!」

「はっ、あいにく俺にはかわいさかっこよさ偉大さ全てにおいて天井知らずな神がいるからな。女なんかに興味ねーぜ」


 いやまあ確かに何回かハスター自ら人の姿になって手伝ってくれた時とかなんかいもあったけど、すっごいかっこよかったけど。かわいさではめぐみんの圧勝でしょ。


「めぐみんにハスターなんかで敵うわけないじゃん」

「なにいってんだお前。頭おかしいんじゃねえの? あぁ頭はおかしいか」

「は?」

「あ?」


 私たちの間で見えない火花がバチバチと弾けていると、めぐみんが仲裁に入ってきた。


「ちょ、ケンカしないでくださいよ」

 天使か。


「はぁ、ここはめぐみんに免じて許してあげる」

「ちっ、俺の心の広さに感謝するんだな」


 こんな感じで私たちは犬猿の仲なのでしたまる。


□■□■□■□


「で、れんれんは転生特典なににしたの?」

「ふっふっふ、聞いて驚け……なんと呪文を唱えるときのデメリットをなくして貰った!!」

「え、なにそれ。どこまでがデメリット?」


 もしMPと正気度の減少も「デメリット」扱いだったら私の立つ瀬なくなっちゃうんだけど。

「流石にMPとかはかかる。あれだよ。ご加護の低確率で怪物になっちまうこととかそういうのだよ」


 うわ、なんとか私のアイデンティティーは守られたけど普通に強い。

 だってノーリスクで1日1ずつSTRとPOWが増えてくんでしょ?

「ちなみに今のPOWいくつ?」


 こいつまだ地球にいたときもデメリットお構いなしに加護貰ってたからな。

 もうだいぶたまってるんじゃない?


「あ~……STRが130、POWが148だな」

「わお神話生物」


 もう完全に人間やめてて草。

 クトゥルフよりSTR高いとかもう笑うしかない。


「ちなみにお前は?」

「私? 私はねえ……MPと正気度を無限にしてもらった」

「ふぁっ!? なんだそれ!?」


 ま、私の前にはSTRもPOWも関係ないんだけどね。

 あまってやっぱ関係あった。運がかわるじゃん。

 てことはこいつ今幸運740? これにはカズマさんも真っ青。


魔術師メイガスのお前がそれ無限にしたら最強じゃねえか」

「……正直あんたのせいで私の凄さ大分霞んだよ」

「いやいやだっててことはヨグパンチにMP無限につぎ込めるってことだろ? ……最強じゃねえか」


 でも幸運740が相手だとまったく攻撃当たんなそう。

 あ、ちなみにめぐみんは今ストロベリーパフェを頬張ってる。かわいい。


「そういえば今更だけどこれれんれんのおごりね」

「は? いやまあいいけどよ」


今更の確認をしていると、視線を感じた。発生源は私の真横。

横を向くと、めぐみんが私のチョコパフェに熱い視線を送っていた。


「いる?」

「いいんですか?」

「もちろん。はいあーん」

「ん……」


 私の差し出したスプーンに齧りつくめぐみん。


「おぉ、これもおいしいですね」

「ふふ-ん、でしょ?」


 美味しくないチョコはない! ……訂正、あんまりない!

 目の前の男の作るチョコは例外。こいつ料理マイナスなんじゃないの? ってぐらい下手だから。


「めぐみんのもちょっとちょーだい」

「はい、どうぞ」


 ずいっとパフェの器が差し出される。

 んー、ちょっと違うんだよな~。


「……」

「?」


 何か言いたげな視線をめぐみんに送り続ける。

 するとめぐみんがこてんと首を傾けながらなんでしょうかみたいな顔をした。

 なので口をあーんと開ける。


「ん」

「ん? あぁ、はい、あーん」

 伝わった。やったぜ。

「ん~! 甘くておいしい!」

「ですよね! やはりスイーツは最高なのです!」


 2人でキャッキャウフフとパフェより甘々な雰囲気を作る。

 するとれんれんがうわぁみたいな顔をしながら居心地悪そうにし始めた。


「おいめぐみんとやら」

「あ、はい。なんでしょう」

「コイツは止めといた方がいいぞ。大分頭おかしいし何よりお前の身が危険だ」


 ちょっと、人を危険物みたいに言わないでよ。


「私はすでにサツキに胃袋を掴まれているので今更手放すことなんて出来ませんよ」

「ちくしょう流石手が速え」

「ふふーん、私からめぐみんを奪うのは無理だと思え」


 上手くめぐみんの入信に関する話はうやむやにできたと思う。

 流石は私。ただいちゃつくだけでめぐみんを危機から救って見せた。

 そんなことを考えていると、テーブルの横に置かれていた新聞が目に入った。

 そこには、こんなことが書いてあった。


『最近王都の住民が名状しがたい醜悪な怪物に突然姿を変える事件が多発』

『被害者の共通点を探ってみると、全員新興宗教である「ハスター教」の信者であることが判明』

『王都で爆発的に広まっている「ハスター教」にはなにか裏の顔があるのか!?』


「………………おいれんれん」

「あ?」

「これは一体どういうこと? 説明次第じゃたたでは済まさないよ」

「どれどれ……、…………。………………」


 れんれんの顔がみるみる青くなっていく。


「あんたまさか……加護のデメリットについての話してないの?」

「い、いやいやちゃんとし、しししてるよ? 当然みんなそれをり、理解したうえで入信してる。あ、安心して」


 いやどもりすぎでしょ。


「それ、ホントだよね?」


 呪文『恐怖の植え付け』を使う。

 れんれんはSUNチェック1d6/1d10です。


「あ、あぁ……もちろん」


 ん、ホントっぽい。


「うむ、信じる」

「はぁ~~、よかったぁ」


 かくして、私は探索者仲間である蓮ノ縁はすのぶち れんと再会を果たしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る