第68話:最高なのは……




 シセアス公爵家で、大々的なお披露目パーティーが催された。

 後継者が5歳を無事に迎えたので、そのお披露目パーティーである。


 不思議な能力については母親のタイテーニアから。

 公爵後継としての心得や勉学は父親のオベロニスから。

 そして子供としての素直な心や楽しい遊びなどは、叔父のロビンから習ったヘンリー。


 もう少し大人になったら、祖母のレアーや親戚のレイトス大公辺りが、別の教育を始めてくれる事だろう。



「これからのシセアス公爵家と、後継者としての僕をよろしくお願いします」

 子供らしさを感じるヘンリーの挨拶に、会場から温かい拍手が贈られる。


 元気な挨拶をした我が子を笑顔で見守る仲睦まじい二人が居た。

 シセアス公爵夫妻である。

「もっと凄いカッチリした大人のような挨拶を用意してたのよ、あの子」

 タイテーニアがコッソリ横のオベロニスに囁く。

「爪を隠すって事も教えなきゃな」

 オベロニスも同じように囁き返してから、そっと視線をタイテーニアへ移す。


「今の子供らしい挨拶は?」

「勿論、ロビンよ」

「あぁ、なるほどな」


 招待客の一番前でヘンリーに向かって一際大きく拍手をしているロビンを、タイテーニアもオベロニスも、ほっこりとした気分で見つめた。




「格好良かったぞ!ヘンリー」

 タイターニが孫を抱き上げ頬ずりする。

「駄目!僕!僕が抱っこするの!」

 ロビンがタイターニの腕の中のヘンリーへ腕を伸ばす。

 この二人は、最近ヘンリーの奪い合いをする事が多い。


「私にも孫を抱かせてくれぬかね」

 長い新婚旅行には再出発せずに、結局ずっとシセアス邸に住んでいるテーゼウス前公爵だ。

「そんなムサイじいじより、私の方が良いわよね?」

 ヒッポリーナ前公爵夫人が負けじと腕を差し出す。


 この辺は、無条件に甘やかす、子供らしいヘンリーを育む面子だ。



「後継者教育はいつから?」

 フィロスティー・レイトス大公がオベロニスに笑顔で問い掛ける。

「初等科に入学してからと考えてますが」

 オベロニスの返答に少し考えてから「まぁ優秀だから大丈夫か」と、何やら考え込むレイトス大公。


「共同事業はヘンリー主体の方が安心よねぇ。アイデアのロビン、経営のヘンリーって感じかしら?」

 まだ10歳と5歳の子供に、経営の何たるかを教えるつもりのレアーである。

 勿論それは、タイテーニアにきつく止められた。



 駄目押しとばかりに、おしのびで国王陛下と王妃陛下まで来場し、ヘンリーのお披露目パーティーは終了した。


 その日の夜、夫婦の寝室にあるソファで、タイテーニアとオベロニスは二人だけで乾杯をした。

「正直、愛ある結婚は諦めていた。そのうち陛下やレイトス大公が決めた相手と結婚して、後継者の為だけの結婚生活を送るのだと」

 オベロニスが手の中のワインを見つめる。


「私こそ、あのクズに一生奴隷のように扱われながら、子供も産めずに終わるのだと思ってました」

 愛人の子を後継にするのは予想出来ましたから、とタイテーニアは苦笑する。


「ティア。全ては君の不思議な能力のお陰だ。それのお陰で君と出会う事が出来た」

 オベロニスがグラスをテーブルに置き、横に座るタイテーニアの手をそっと握った。


「いいえ、切っ掛けはそれでも、私を、シャイクス伯爵家を救ってくれたのは、オーベンの能力ですわ。素晴らしい最高の旦那様です」

 タイテーニアは、そっとオベロニスの胸へと寄り掛かる。


「そろそろ二人目が欲しいね」

 オベロニスに手を引かれて、タイテーニアは立ち上がる。

「はい」

 頬を染めながら頷いたタイテーニアを、オベロニスはベッドへといざなった。




 終

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!


また次作でお会い出来たら幸いです

(*^_^*)

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いいえ。チートなのは旦那様です 仲村 嘉高 @y_nakamura

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