1-6 白く美しいうなじ

*本エピソードには性描写が含まれます。R18表現を含む完全版はエブリスタの方で公開しておりますので、以下のURLからお越しください。

https://estar.jp/novels/26000341/viewer?page=8


 アキトの腕をつかんだやつはカウンターの前で無造作に金を突き出し、そのまま強引にロッカールームへとアキトをいざなった。

 カウンターの中からスタッフが何かを叫んでいる。

 だが、やつはスタッフの声など最早耳に入っていない様子だった。


「おい、お前、何のつもりだ!」

 アキトはやつに怒鳴った。

 しかし、やつはアキトに何も答えることなく、ロッカーの前でするすると服を脱いでいった。


 その時になって初めてアキトはそいつの姿かたちをはっきりと目にしたのだった。

 やつはまるで少年のような容姿で、細くて小柄な体型をしていた。

 髪はつやつやとした光沢を放ち、肌は雪のように白くて繊細だ。

 筋の通った鼻筋に綺麗な二重の瞼。

 唇は小さく可憐で、頬はほんのりと上気して赤い。

 ほっそりした肢体には無駄な贅肉は一切ついておらず、そのスラッと滑らかな肉体美はそのシルエットだけでも人の目を惹き付けるのに十分だ。

 両胸の真ん中には鮮やかなピンク色の突起がその小さなサイズにも関わらずやけに存在を主張している。

 その胸からすべすべした腹筋へと目を落としていくと、愛らしいへそがチョコンと居座り、股間にはその子どもらしい容姿には似合わぬ大人顔負けのモノがそそり立っていた。


 やつの身体から漂う甘く官能的な香りはさらに強さを増し、アキトの全身を包み込んだ。

 だめだ! 

 こんな所で興奮を覚えるなど、いかなる時も理性的であるべき「生粋のα」としてあるまじき行為だ。

 しかも、クルージングスポットに無理矢理人を連れ込むようならちなΩごときを相手に……。

 アキトは自分の中から沸騰し溢れ出しそうになる野性的な性的欲求と、理性的に振舞わねばならないという理想との間で激しく揺れ動いた。


 だが、そんなアキトにそいつは不敵な笑みを浮かべながら流し目を送り、彼の身体に腕を回してまとわりついて来た。

 やつの身体が直接的にアキトの身体に触れる。

 アキトの身体が電撃が走ったかのようにビクンと反応する。

 その繊細な指でアキトの唇を優しく触れ、口付けを求めてその美しい顔が迫って来る。


 もうだめだった。

 アキトの中で理性は完全に野獣のような性欲に敗北を喫した。

 アキトはもう無我夢中でそいつを押し倒し、その美しい肢体にむしゃぶりついた。 

 こいつが欲しい。

 この美しい身体を俺だけのものにしてしまいたい。こいつの身体を無茶苦茶に犯し、一点の曇りもない白い肌を汚してやりたい。

 破壊衝動にも似た性的欲求がアキトの全身を貫く。

 もう、俺もこいつもどうなっても構わない。


 ただただこの快感の波に身を任せ、感情の赴くままに身体と身体を擦り合わせ、舌を這わせ、指で肢体をまさぐる。

「ああん!」

 若々しく瑞々しい高めの声でやつが喘ぐ。

 その声が更に官能的な響きとなって、アキトの聴覚をも支配する。

 アキトの五感はすべてこいつのものだった。

 このどこの馬の骨かも知れぬΩにアキトは完全に支配されていた。


 これ程の強い快感をこれまでアキトは経験したことがなかった。

 そもそも恋愛経験の乏しいアキトにとって、これが彼の「初めて」だったのだ。


 この上ない快感に、アキトの興奮は止まらない。

 衝動に突き動かされるままにアキトは激しくやつと絡み合った。

 やつの喘ぎ声は一段と高まり、二人の汗が飛び散る。

 まだだ。

 もっともっとこいつの身体を、俺たち二人とも壊れてしまう程に激しく痛めつけたい。

 アキトの衝動的な性欲は満足するどころか、余計に大きく膨れ上がる。


 その時だ。

 アキトの目に、そいつの白く美しいうなじが飛び込んで来たのだった。


 こいつのうなじを俺だけのものにしてやりたい。

 俺の痕をこの一点の曇りもない肢体に刻み込んでやりたい。


 爆発的なまでの欲求がアキトを身体の奥から突き動かす。

 次の瞬間、アキトは肉食獣のように、やつのうなじに噛みついていた。

 口の中にじんわりとやつの血液のしょっぱさが広がっていく。


 もっと深く、もっと強く、こいつの身体に俺の印を刻み込んでやる。


 アキトは激しく強く、そいつのうなじを噛み続けたのだった。

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