第20話 料理を知るならこの一冊!『斉民要術―現存する最古の料理書』

 鷲生はかねてから食べ物の描写が苦手です。


 体質的に中性脂肪の値が高くなりやすいため、食べるものに気を遣っており外食などほとんどしません。毎日の食事が単調になりがちで……。中華料理もほとんど知りません。


 で。

 中華ファンタジーで登場人物に何か美味しいものを食べさせてやりたくても、思いつかないんです……。


 もっとも、仮に鷲生が食道楽で現在の中華料理に詳しかったとしても、唐代とかと今の中華料理とは違いますしね。


 そんな鷲生に、「これ! むっちゃエエ資料本やん!」という出会いがありました。


 その本に行きついたいきさつは……。

 鷲生の投稿していた中華ファンタジーが完結するので、次回作の構想を練っております。

(拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815 !)


 鷲生は以前平安モノをかいたことがあるので(「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393)、「また平安モノでも書こうかしら」と『古典がおいしい!平安時代のスイーツ』という本を見ていました。

 すると、巻末の参考文献に『斉民要術―現存する最古の料理書』という書名が挙げられていたのです。


『斉民要術』とは「中国北魏の賈思勰かしきょうが著した華北の農業・牧畜・衣食住技術に関する総合的農書」(Wikipedia「斉民要術」)だそうです。


 その『斉民要術―現存する最古の料理書』という本は、出版社のサイトの内容紹介によりますと、下記の通り、原著の『斉民要術』から食についての部分を抄訳したもののようです。


「92編、10巻に及ぶ原著から、麹や酒、醤、酢などの醸造法や各種の乳製品の製法など、『食』に関する箇所を精選し邦訳、解説する。」

(出版社のサイトでは本が購入できてしまい、そのようなサイトへのリンクを張ることはカクヨム運営様に叱られてしまいますので、恐れ入りますがご自身で検索なさってくださいませ)。


 書誌情報は以下の通りです。


『斉民要術―現存する最古の料理書』 2017 雄山閣 小島 麗逸 , 太田 泰弘, 田中 静一訳

 ISBN-10 4639024703 ISBN-13 978-4639024705

 2023年現在、定価の6380円で購入可能です。


 目次は以下の通りです。


 第1部 『斉民要術』概論

 第2部 『斉民要術』成立当時の思想と風俗

 第3部 訳文および訳注


 第3部に酪とか麹とか醤とか「にくなます」「ちまき」「精進料理」の作り方がたっぷりと!載っています。


 この本は1997年に一度出版されたものの新装版だそうです。その、冒頭頭部分の「『斉民要術』の新装版刊行にあたって」という文章(ローマ数字Ⅰ‐Ⅳページ)で、『斉民要術』の原著の成り立ちや、日本語への翻訳について触れられています。


「『斉民要術』は六世紀山東省の一地域の農務官が書いた乾地農法の書である。」


「本版は、その後半部分の料理篇を訳出した。原著にはそれ以前の関連文献が多数引用されているが、すべて喪失している。本書の中国語版も中国には残っていなかった。」


「日本の二、三の寺院、そして神奈川県にある金沢文庫に残っていた。それを発見し、農業総合研究所で西山・熊代両先生に翻訳させたのが東畑精一先生である」


 ここに出てくる西山・熊代氏についての興味深いエピソードも記載されています。


「西山・熊代のお二人がオンボロの復員兵姿で(※中国大使館に)行くと、守衛がいかがわしく思い、大使館の中に入れてくれなかったことや、また後に大使館からようやく中国へ送られ、郭沫若氏から『戦後まもなくに中国の古典に興味を持ち、そして残された』ことへの丁寧な謝辞が綴られた礼状が届いたという話は、今でも覚えている」


 ↑日中の近現代史を垣間見るような、いいエピソードだと思います。


「本版は熊代先生が訳された料理篇を、さらに一般の方が読み易いように再翻訳したものである。漢字の原文は、少しくらい漢文を習得しても解釈できる代物ではない」


「料理篇を訳された熊代先生は、植物、野菜、魚などが日本のどれに該当するか比定するのに、相当な時間を要したと言っておられたことを思い出す」


 そして、熊代訳の読書会のメンバーの中から声が上がって、今回鷲生がご紹介している再翻訳版である『斉民要術―現存する最古の料理書』が生まれたそうです。


 このような経緯で一般向けに書かれた本ですので、とても読みやすいですよ!


 これがあれば古代中国を舞台にしたファンタジーの飲食シーンは何とかなりそうですw


 今日、鷲生は自治体の図書館から持って帰ってきて、パラパラとページをめくってみて「これはエエ資料本が見つかった!」と浮かれて、その勢いで今回の拙文を書いているのですが。

 事典のような感じでレシピが載っているので、できれば借りるだけではなく、購入して手元に置きたいと思っています。


 ところが……前述しましたとおり、定価は6380円……うーーーーん。

 某ネット書店で見ている限り、この値段より安い古本はないようです……。


 ただ、この本の2017年に発行されたこの本は、1997年発行の「底本」の「新装版」です。

 この1997年の方が古書で2000円くらいで見つかったのでそちらを購入しようかと思います。


 なお、この本について調べていたら下記の本が見つかりました。鷲生は手に取っていませんが、面白そうなので読んでみたいと思います。

 ↓

『中華料理の文化史』 2013 張競 ちくま文庫


 中国古代とはあまり関係なさそうですが、以下の本も面白そうです。

 ↓

『中国料理の世界史:美食のナショナリズムをこえて』 2021 岩間 一弘  慶應義塾大学出版会

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