ソーシャルタイムアタック

くろ

ソーシャルタイムアタック

 ブロックされた。昔は仲良かった友人にブロックされた。原因は、1週間前に私がソイツのことを気持ち悪く感じてリムーブした。そして1週間後ブロックされた。なぜ間が空いたのはわからない。前々からソイツらに不満は持っていた。だからブロックされたところで「君!とうとうやったね!」ぐらいしか感情が湧かない。否。本当はクソムカついている。ソイツらはどうせ裏ではしゃいでいるのだろうか。「あいつブロックしてやった」「いい気味だ」「ウケるー」考えただけでムカついてくる。下劣な奴らだ。さらに考えれば考えるほどムカついてくる。こうやってムカついているのもソイツらにはお見通しなんだろうか。私の知らないところで私を見て嗤っているのだろうか。そんなことは許されない。許してはいけない。そこで私は考えた。ソイツらにブロックされればいいんだ。私からブロックすればソイツらは囃し立てるだろう。だからブロックされるよう仕向ければいいんだ。


 思い立ったらすぐ行動だ。まずは低俗なリプライを送ればいい。誰をターゲットにしよう。タイムラインを遡る。「みんなで遊んだ時はしゃぎすぎたわ」五月蝿いな。そうだ。手始めにコイツにブロックされよう。みんなで遊んだとか言っているがこのみんなの中に私はいない。私はいるだけで周りを不快にさせるから、ソイツらに排除されている。さあ、リプライを送ろう。「私は排除して遊ぶのは楽しいですか」一語一句、何度も声に呟き呟きながら入力する。わたし、は、はいじょ、して。送信。少し待つ。待っている間も目を大きく開いてフォロワー数の増減がないか確認するのを欠かさない。来た。フォロワーが-1された。ブロックされることに成功したんだ!所要時間5分。この調子でいけば残りのソイツらも倒せる。私が正義だと証明してみせよう。


 2人目。「まじ◾️◾️◾️◾️のネタ面白い!」つまらない。よりによっても私をブロックしたソイツのネタを誉めている。私はソイツのネタはなにも面白くないし良さがわからないというのに。分かった。わざとだ。私のことが嫌いだから私のことを嫌ってる人を褒めてそれをタイムラインに流すことで私に”いやがらせ“をしているんだ。許せない。許せない、許せない!絶対に許してはいけない、許してはいけないユルシテハイケナイ…そうだ。この気持ちを伝えればいいんだ。「お前を許さない!嫌がらせを直ちにやめろ!」さあ、私が一番面白いと証明して見せよう。スマホを閉じる。ピコン。通知が鳴る。「新着のいいね一件」何故。なぜいいねをする?スマホを開く。いいねはついていなかった。これも嫌がらせか?ソイツらはこうやって狼狽えている私を見て笑っているのだろうか?やめてくれよ!スマホを投げる。ガラスフィルムが割れる。触ると血が出た。私をこれ以上バカにするのはやめてくれよ…思い出した。私は今からリスパダールを飲みたいんだ。リスパダールに手を伸ばし、自分が飲みたい分だけ贅沢に飲む。ぼんやりしていると徐々に視界が歪んでくる。あれわたしはさっきまでなにをしていたんだろうなんでスマホわれているんだろうねむたくなってきた


 目を閉じる。おやすみなさい。


 「ねぇ、なんかよくわからないリプライが来たけど」「誰なんだろうねこの人」「『私は排除して遊ぶのは楽しいですか』?文章もめちゃめちゃだ」「プロフィール見たけどこのクラスタの人じゃないみたい。」「どこから俺らのアカウント見つけてきたんだろう」土曜日。俺たち同じ趣味を持つものは決まってこの時間に集まっている。最近、SNSで変なやつに絡まれていることもありみんなの顔と空気は重い。カラン。扉を開く音が聞こえる。「遅れてきた。ごめん。何の話してた?」遅れてもう1人やってきたのだ。「ああ、このアカウントの話。」遅れてきた人が俺のスマホを覗くと、直ぐに「あー、知ってるよ。コイツ、同じクラスタかと思ってフォロー返したんだけど、違ったんだよね。一方的にリプライ送ってきた挙句突然ブロ解されたから、ブロックした。」と説明した。「なんか病気持ってるかも。それっぽい。うん。」俺らにはあのアカウントが何なのかはわからない。しかし、もし本当に病を患っているならば今頃彼女も苦しんでいるのかもしれない。そう思うと、一方的に不気味だと思ってもな、という気持ちになってきた。


 目が覚める。お前の使命を果たせと脳内にいる私のコントローラーに言われたからだ。さあ、3人目もなんだ。私の正義は何にも負けない。

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