プロセシオン

佐藤菜のは

プロセシオン

巡礼のみちを辿る男

泥濘に凍える


故郷の村には老人と痩せた馬ばかりが残る

出立の日に受け取った餞別は一本の刀


錆びついた諸刃の短剣

首から下げて供物とする


男は鉢を抱えて進む

そこにはきざすことのない種が蒔かれている


ひたすら先へ

河を崖を谷底を越える


道中を妨げる襤褸のかたまりは

行き倒れの成れの果て


道なき道はいつしか

無辺の地に


鴇色の草原を行く波濤

鳥が羽ばたくことを拒む風


芽吹きと引き換えの殉教

息絶えるまで歩き続けること――


……そして

…………幾百の星霜が流れた


…………………………………

…………………………………


…………………………………………

……………………………………………………


空は澄み

凪の地平


時は沈み

小草薫る


音は消え

生けるものなし


淡紅の野に悠然と立つ一本の樹

降り積もる陽光


大きな樹の幹に刺さるのは

こぼれた短剣――


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プロセシオン 佐藤菜のは @nanoha_

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