第4話 いきなり実技試験開始!って聞いてないよ?

お昼ご飯を食べた流れで、八神咲良と一緒に指定されたエレベーターを使い、地下3階の実技試験会場へ向かう。

試験会場の扉は近代的なGUILD本社ビルに似つかわしくない重厚な木の扉だった。

そう、とても古めかしい例えば作られてから数百年経っていると言われてもおかしくないほど、古めかしい重厚な木の扉だった


「ここだけ木の扉なのね?」

「他は強化ガラスや金属の自動ドアだったよね?」

「何か意味でもあるのかしら?」


試験会場の木の扉の前には少し広めのロッカールームになっており左右で男女に別れるようである。

男性・女性と書かれた案内板にしたがい、お互いそれぞれのロッカールームに向かう


「ここでお別れですね」

「そうだね、中で会えるかもしれないけど、とりあえずお別れって事で、今日はありがとう」

「なんで、お礼なんか?」

「いや、1人だったら寂しかっただろうなって、咲良さんが話しかけてくれたおかげで、色々助かりましたよ」

「そんなこと言ったら、私こそありがとうございました、悠生さんが気さくにお話してくれたおかげで緊張とかしなかったです」

「ははは、じゃあお互いさまってことで」

「ふふ、そうですね、あっそうだ連絡先交換しましょうよ、中でまた会えるかどうかわかりませんし」

「そんな簡単に連絡先なんて教えて良いのか?」


「悪用するんですか?」などと言いながら、可愛く笑った。

連絡先を交換すると、咲良さんは女性用のロッカールームへと消えて行った。


いつまでもお見送りしている場合ではない、自分もさっさと着替えて集合場所へ向かわねば。


男性ロッカールームへと入ると、整然とならぶこれまた古めかしい木で出来たロッカーには受験番号が記されていて、受付で渡された鍵で開くらしい。

自分の受験番号が書かれたロッカーを開けると、見たことの無い素材で作られたシンプルな服が上下、靴下、そして靴が置かれていた。

用意されていた服に袖を通すと、サラサラとした肌触りでシルクのような見た目に反して、なかなか丈夫にできているらしいことがわかる。


他の受験者は、ほとんどがすでに着替えを終え、ロッカールームに残っていたのは自分だけのようだ。

慌てて着替えを終えて、入ってきた入り口とは反対側のこれまた古めかしい木でできた扉を開けて集合場所へ向かった。


古めかしい木の扉の向こうは、ダンジョンだった・・・


扉を開けると、そこは薄暗い広間の様になっており、壁は洞窟のそれのように岩肌がむき出しで、数m置きに松明が付けられているのか、ほの暗く照らしている。

広間の先は次第に狭くなっていて、最後には人が3人並んで歩けるくらいの洞窟が続いているようだ。

その洞窟の入り口の両側には自衛隊員らしき人が立っているが、腰には銃の代わりに長剣が備えられている。


広間の中央付近には、舞台のように少し高くなった箇所があり、そこに説明会で解説をしていたGUILDの社員が服を着替えて立っていて、その前に参加者が集められている。


参加者の集団から少し下がった場所に八神咲良が居た。


後から「咲良さん」と、声をかけると少し不安そうな顔をしながら振り返る。


「悠生さん!また会えてよかった、ここ薄暗いしなんか嫌な雰囲気がするから、なんとなく心細くて・・・」


言われてみれば、先ほどまで居た近代的なGUILD本社内とは全く違った雰囲気で、少し何て言うか、今まで感じたことの無い雰囲気に包まれている。


「そういえば、なんとなく変な雰囲気ですね」

「とにかく悠生さんに会えてよかった」

「まあ、僕なんかで安心してもらえるなら光栄ですが、これはきっと洞窟特有の湿気や匂いのせいでしょうね」


それから、お互いに気が付いた事や周囲の様子について話していると、舞台の上から声が響いた。


「皆さん、静粛にお願いします」

声は洞窟内を反響し、そんなに大きな声ではなかったのに、こだました。

「皆さんもお気づきかもしれませんが、ここはすでにダンジョンの中です」

会場に集まった人々からざわめきが起こる。

「本日最後の実技試験は実際にここ都庁ダンジョンの中で行わせていただきます」


その言葉に、隣に居る八神咲良と顔を見合わせる。

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東京ダンジョン・エクスプローラーズ 旬伍狸羅 @Syungorilla

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