修学旅行最大のイベント
結騎 了
#365日ショートショート 203
「お疲れ様です、野宮先生」
「どうもお疲れ様。これでやっと修学旅行も終わりよ。ああ、職員室のクーラーは相変わらず効きが良いわね。生き返るようだわ」
「またまた〜。まだ修学旅行は終わっていないじゃあないですか」
「もう終わったも同然よ。あとは、ここでゆっくりあの子たちの帰りを待つだけだもの」
「それにしても思い切りましたよね。修学旅行最大のイベントが、学校に帰ってくることなんて」
「前々から思っていたのよ。ほら、うちのクラス、男子クラスじゃない。あの子たち、計画性ってものが全くないのよ。いつも行き当たりばったりというか、目の前の楽しいことばかりに生きてる。それじゃあ、立派な大人にはなれないわ」
「だからといって、クラス全員で東京まで新幹線で行って、そのまま野宮先生だけ先に1人で帰ってくるなんて、中々どうして……」
「彼らには、班ごとに数万円の現金を渡してあるわ。新幹線やバスを乗り継いで学校に帰ってくるくらい、十分すぎる額。お土産だって買えちゃうでしょうね。大変だったのよ、この予算を校長に掛け合うの」
「生徒の自主性を重んじ、計画性を養う。子供たちを都会のど真ん中に放り出して、しかしちゃんとお金は与えて、自分達の判断と行動だけで帰って来させる。なんとも異色のプログラムですよ」
「これであの子たちも少しは成長してくれるといいんだけどね」
「お、先生、スマホが鳴ってますよ」
「あら、これはB班の鈴木ね。なにかトラブルかしら……。えっと、もしもし」
「…………」
「…………」
「……どうでした?」
「迎えに来て、ですって」
「ええっ、なんで!なにか怪我でもしたんですか」
「駅前のファミレスでステーキバイキングのフェアをやっていたらしいのよ。それについ皆で入ってしまって、使い切ったようよ」
修学旅行最大のイベント 結騎 了 @slinky_dog_s11
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます