第27話 ヴァイオリニストとは

 結局のところ、俺が目指すプロヴァイオリニスト像とはなんだろうか?


 操の言うように、AIと比較したときに人類の神聖さを守ってくれる砦?


 違うな。


 ヴェルクマイスター先生の言うような、他人の人生にまでも潤いをもたらす、ずぶ濡れの芸術家?


 これも違う。


 ではヴァイオリンという神に仕える聖職者だろうか?  まぁ憧れるが、非現実的で常識からかけはなれている。


 つまり、よく分からない。


 でもまだ俺は20歳。考える時間ならそれなりにある。人生は、ヴァイオリンを究めるには短すぎるが。


 最悪、一生分からなくてもいい。分かりそうにないからこそ、探究しがいがあるのだ。


 そんなとりとめのない思索から意識を戻すと、俺は再び音階練習を再開した。

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バーチャルの上のヴァイオリン弾き 川崎俊介 @viceminister

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