第5話続かない会話

カラカラ、と浮いた氷の隙間に差し込まれたストローでガラスのコップに注がれたコーヒーをかき混ぜる衣縞。

「……」

「観葉植物も置かれてて……落ち着くね。衣縞さん……」

「……だね。えっと……」

「……」

カフェの店内で流れるクラシックと緑を取り入れた観葉植物が所々に置かれており、落ち着く。

落ち着く、はずなのに……

正面の席で、手元に置かれるチーズケーキに視線も向けることなくガラスに満たされたアイスコーヒーのストローを摘んでかき混ぜ続ける彼女。

彼女の落ち着かない様子に、俺まで調子を乱されていた。

彼女との会話が、続かない。


十数分前に交際を申し込まれ、通学路にあるお洒落なカフェに立ち寄っている現在——である。

カフェに入店する直前、俺と衣縞の指先が触れておりお互いが口を閉ざしてしまう事態に陥った。


ああぁーーっっもうどうしたらいいんだぁーーっっ!!


どの部分も欠けていない彼女のチーズケーキに視線を向けた俺に、「……ごめんなさい」と店内で流れるクラシックのBGMにもかき消されるほどの声量で謝る彼女。

「いや、僕こそごめ——」

いたたまれずに、謝ろうとした俺に彼女が遮り、被せる。

「こういうの……初めてで、上手くなくて……」

「初めてなら……上手くいかないくらい、あたり、まえだよ」

口にして、ラリーする言葉セリフの選択を失敗ミスした感覚を覚えて、俯く俺。

彼女は両手のひとさし指の先を近づけたり離したりを繰り返しながら、「あの、ね……」と話し出した。


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抱きたいっていうのは……えっと、言葉の綾でして 闇野ゆかい @kouyann

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