第4話告白
翌日の放課後。
俺と衣縞は並んで下校していた。
ブレザーの袖に腕を通すには、若干ではあるが暑い気温で、制服の白シャツの中が汗ばんでいた。
衣縞はブラウスの上にクリーム色のカーディガンを羽織っている。
カーディガンの第一ボタンだけ留めずにいる彼女だった。
菱形の穴が等間隔に整列したグレーのフェンスが視界に入り、フェンスが途切れた先にあるふみきりに視線を向けた彼女が独り言のような声量でボソッと、呟く。
「あの娘みたいに……」
「ん?なんか言った、衣縞さん?」
「ううん。あのカップルが青春してるなぁ〜って、気になって」
首を左右に振り否定して、フェンスを挟んだ駅のホームに顔を向けて、続けた。
彼女のその横顔には、羨ましそうだと言いたげな微笑みがあった。言葉のニュアンスもそれが含まれていた。
「あのカップル……カップルじゃないかも、しれないよ」
「そうかも、しれない……ふ、ふじっ……三智っ」
駅のホームのベンチに肩を触れ合わせながら楽しげに談笑する制服姿の男女の背後を見つめた視線を俺に戻し、頬を赤らめ名前を呼び捨てにする彼女。
「ふぇっ……?い、衣縞さん!?なんで名前を……?」
彼女からの唐突な名前呼びに、ましてや呼び捨てに、間抜けな声が漏れた俺だった。
「み、三智って……呼んだら、距離が近くなるかなって……」
「……んだ。えっと、あぁーっと……ちっ智尋……」
「……三智。好きです、大好きです……藤木くんのこと、付き合ってくださいっ!」
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