第97話 「いいね」をつくった人

 いまNHKプラスで(またかよと言わないで)「プロフェッショナル仕事の流儀」を見ると歌人の俵万智たわらまちさんに密着したドキュメントをやってます。朝ドラに短歌が出てくるらしいじゃないですか。繋がってるんですかね。わたし朝ドラは見てないんですけど……。


 俵万智さん、知ってますか?


 1987年、俵さんが発表した第一歌集『サラダ記念日』が大ベストセラーとなりました。わたしは「俵万智現象」世代です。高校生でした。


 当時、現国の先生が『サラダ記念日』を引き合いに出して、「短歌を作りましょう」という課題を出してましたね。百人一首のような文語短歌でない口語短歌を作らせようという意図だったんでしょう。俵さんは高校の国語教諭をしながら短歌をやってて、うちの高校の先生も強く感じるところがあったのかも。先生は俵万智さんと同年代の女性でしたから、なおのこと――と今になって思います。



「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日



 番組によると「いいね」の元祖らしいですよ(笑


 歌集のタイトルにもなった「サラダ記念日」が詠み込まれた短歌。デートに作っていったお弁当を彼に褒めてもらったんでしょうか。ふたりのあいだには、これからいくつもの「記念日」が生まれるんだろうな、と微笑ましくなる恋の歌です。


 当時はよく分かっていませんでしたが、小説を書きはじめ、自分も言葉を扱うようになると、この言葉を選べるセンスに舌を巻くしかありません。ここには研ぎ澄まされた31文字(この歌は32文字ですが――「字余り」もまたいい)が並べられていると感じました。この短歌と比べるとわたしの小説など、ただただ冗長なだけの文字の連なりですね。反省。


 俵万智さんのお顔は写真で知っていましたが、この『プロフェッショナル仕事の流儀』ではじめて、動いて、話している俵さんを拝見しました。すーごく可愛らしい女性でした。なるほど「サラダ記念日」を読む人だと納得しました。

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