第83話 とにかく書き続けること
「い」――犬も歩けば棒に当たる。
むかしは、紐に繋がれずぶらぶら歩いている犬は棒でぶたれたみたいです。動物虐待? ひどい話ですが、野良犬は狂犬病を持っているため、公衆衛生上の必要もあって追い払わなければならなかったのでしょう。
「犬ですら出歩けば棒に当たる。人間も内にこもっていないで外へ出なさい。きっと普段ない良いことに行き当たるだろう」というのが、「犬も歩けば――」のことわざの意味です。子どもの頃、持っていた「いろはかるた」にこんな風に書いてあったように思います。毎日同じことばかりしていては、新しい発見はないんです。いつもと違うことをいないと――。
☆
仕事のことばかり考えていては、新しいエッセイネタも手に入らないわけで、仕事のことを考えるのはやめました(笑)。で、ネタの仕入れ先として重宝しているNHKプラスを見ていると……ありました、ありました。
『浦沢直樹の漫勉Neo』
漫画家さんの仕事場にカメラを据えて、その仕事ぶりに密着するバラエティ番組ですが、わたしが見たのは渡辺航さんの回。人気マンガ『弱虫ペダル』の作者さんです。
番組は「漫画の書き方」に密着した内容なんですが、漫画は書けないので「ほー」と感心しつつも自分とは関係ないなと感じてしまいます。「おっ」と思ったのは、渡辺さんが『弱虫ペダル』を描くまでの経緯ですね。
鳥山明さんの『Dr.スランプ』に憧れて漫画を書きはじめた渡辺さんは、高校生の時に「少年ジャンプ」のコンテストに入賞しますが、なかなか認めてもらえず連載をもつまでに15年もかかったそうです。
入賞から15年?
その間に同時期にデビューした漫画家(『One Piece』の尾田栄一郎さんや、『BLEACH』の久保帯人さん)はメガヒットを飛ばし、渡辺さんは「おいてきぼり感」があったこと同時に、「自分は天才でなければ、鳥山明でもない。与えられた仕事をやるだけだ」という諦観にも似た考えに至ったようです。Wikipediaによるといったんは漫画家をやめるつもりで就職したけれど、漫画を諦められずにまた書きはじめたらしい。連載はもらえたものの、「少年ジャンプ」は去らなくてはならなかったため、挫折感は大きかったでしょうね。
なんかね〜共感する。書き続けると「おれってダメだ」と「もしかしたらやれるかも」の間を、気持ちが行ったり来たりするじゃないですか。15年もそんな状態だったなんて、考えるだけでしんどいです。よくがんばったと思います。
番組を見てると、渡辺さんの絵はとても上手です(当たり前だ)。こんなに上手でもプロとして15年間も連載を持てなかっただなんて――なんて漫画は難しいんだと思うと同時に、多少文章が書けるようになったくらいで「コンテスト入賞しないな〜」とぼやいていてはいけないなと強く思いました。
あと10年くらい投稿し続けます!
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