第74話 漫画と2023年経済

 昨日書いたAdoの「新時代」はご存知の通り映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌です。なんでも「ワンピース」は連載25周年を迎えたとか。25年? 長いですね〜。


 1997年らしいですね、週刊少年ジャンプに連載がはじまったのが。まだわたしも20代ですよ〜。当時はジャンプを読まなくなっていたので、連載がはじまったことは知りませんでした。単行本が5、6冊くらいかな、出た頃から評判になり始めてそれから、読み始めました。おもしろい。


 わたしは2008年か2009年頃まで、単行本を買い続けてましたが、狭い家に置き場がないのと、奥さんに理解がないのとで読むのをやめちゃったですねー。いまどんな展開になってるんですか?


 ワンピースって、コマの中をすごく描きこんでいるじゃないですか。知ってます? あの質と量を25年間描き続けるって大変だと思うんですよ。スゲーな、尾田栄一郎。はじめて読んだ時から「センスのいい漫画家だな〜」と思ってて、それはいまも変わりませんね。『ONE PIECE FILM RED』も大ヒットしたし、25年間、一人の人間のセンスが世の中に通用し続けるっては、本当にすごいことですよ。


 ただ、そうは言っても25年間、ひとつの漫画が連載を続ける――しかも、漫画のトップランナーであり続けるってのは、ちょっと変だと感じてます。長期連載の漫画といえば、『ゴルゴ13』とか『こちら葛飾区亀有公園前派出所』がありますが、『ワンピース』とは位置付けが違います。『ゴルゴ』『こち亀』は脇役ですが、『ワンピース』は主役ですもんね。どうしてこういつまでも主役を張り続けていられるのか。


 理由のひとつは、この25年間、この国がなんにも変わってこなかったことにあるんじゃないかなと思います。 


『こち亀』の連載期間は1976年から2016年までの30年間ですが、この間、オイルショックや円高不況、バブル景気とその崩壊と、この国の経済は浮き沈みを経験してその都度、わたしたちの価値観も変転してきました。『こち亀』はその間、読者の価値観の変転に合わせて、描く内容を変えて長期の連載を果たしたのですが、『ワンピース』の25年間はバブル崩壊後の「失われた30年」「デフレ経済」の時期とほぼイコールで、価値観の変容がほぼない時期に重なっているように思います。『ワンピース』は『こち亀』とは違い、描く内容を時代に合わせる必要がなかったんですね。


 さて、ここ一年ほど「物価が上がってる」と思わないですか? 上がってますよね、爆上がりですよね。ニュースによると40年ぶりの物価上昇だとかなんとか。多くの若者には(おじさんにとっても)未経験の経済情勢です。バブル崩壊以降、ずっと停滞してきたお金にまつわる常識が大きく変わるかもしれませんね。25年間連載を続けてきた『ワンピース』も、価値観の変容から人気が落ちて、連載打ち切りとなるかもしれません。いま、この国はそういう時代の入り口に差し掛かっている――のかも?

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