第75話 影響力のある作家とは

 先日、ニュースになつていましたが、司馬遼太郎生誕100周年にあわせて、「好きな司馬遼太郎作品」アンケートの結果が発表されていました。見ました? 司馬遼太郎ってだれ?


 ああ、司馬遼太郎は、昭和30年代から60年代にかけて活躍した小説家です。書いていたジャンルは主に歴史小説です。その歴史を観る視点は、ときに「司馬史観」と言われたりして、現代の歴史観にも一定の影響を与えてきた「国民的作家」なのかな……。わたしは司馬遼太郎の小説、大好きです。


 今回書きたいのは、この「好きな司馬作品」のアンケート結果についてです。

 不満があるんです(笑)


 第一位「坂の上の雲」

 第二位「龍馬がゆく」

 第三位「燃えよ剣」


 第一位が、なぜ「坂の上の雲」なのか。おもしろくないよ? 司馬遼太郎は、物語を作るのが非常に上手い作家だと思っているのですが、この作品はその長所が押し殺されているように感じる。描写より説明が、空想より資料が優先されていて小説っぽくないんですよ。


 わたしが思うに、この作品が日露戦争(日本海海戦)でロシアを打ち破る――という明治日本の目覚ましい戦果を描いているところが、国際的地位の凋落で自身を失くしかけている現代の日本人の胸に刺さるんじゃないですかね。


 第二位の「龍馬がゆく」に関しては、以前エッセイでも書いたように読んだことないんです。幕末の風雲児、土佐の坂本龍馬を描いた長編小説ですが、なんともいえません。ただ、この国の人に「龍馬好き」が多いのは、この小説のおかげらしいですよ。わたしはそんなに好きじゃありませんが……。


 第三位の「燃えよ剣」の主人公、土方歳三の方が龍馬より好きですね。土方は、幕末の京都で不逞浪士の取り締まりに当たった幕府の組織、新撰組の副長を務めた男です。同じ新撰組の隊士を次々と粛清していった冷酷な男で、どちらかというと「悪役」が似合う人物ですが、この作品によって「己の美学に殉じた孤高の侍」というカッコいいイメージが出来上がったのか、新撰組局長、近藤勇をしのぐ人気者になってしまいました。


 司馬遼太郎って、すごいわ。ほんと。もう亡くなって27年経つんだけど。

「坂本龍馬」や「土方歳三」といった、元々はそんなに有名じゃなかった人物を、小説の力で幕末を代表するヒーローに変えてしまったし、「日露戦争の勝利」を描いた小説で、落ち目になったこの国に元気を与えてくれるんですから。





☆☆☆



 ちなみに、わたしの好きな司馬作品はトップ10に入っていなくって、一位は「播磨灘物語」(黒田官兵衛の話)、二位は「新撰組血風録」(新撰組の短編集)、三位は「アームストロング砲」(幕末モノの短編集)でしょうか。


 だれが知りたい? こんなこと(爆)

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