第67話 サンタクロースがやってくる

 寒い寒い。

 今日はクリスマス・イブですね。ケーキやプレゼントは用意されましたか?


 うちの小学四年生は、サンタを信じていいのか、信じてはいけないのかという境界線上にいるみたいです。


 わたし自身を振り返ると、小学六年生くらいになるとプレゼントはサンタからではないんだな〜とわかってましたね。それでも嬉しいのですが(笑)


 さて、今回は毎年クリスマスが近づいてくるとテレビから、ラジオから、街のあちこちから聞こえてくるこの歌――松任谷由実さん『恋人がサンタクロース』について、ずっと感じてることを書いてみます。


 歌詞はこんな感じ。


【恋人がサンタクロース】

むかしとなりのおしゃれなおねえさんは

クリスマスの日わたしに言った

今夜8時になればサンタがうちにやってくる


ちがうよそれは絵本だけのおはなし

そういうわたしにウインクして

でもね大人になれば あなたもわかる そのうちに


恋人がサンタクロース

本当はサンタクロース つむじ風追い越して

恋人がサンタクロース

背の高いサンタクロース 雪の街からきた


 ☆


 サンタクロースを信じることがなくなって寂しく感じている女の子に、隣に住む年上のお姉さんが「大人になってもサンタクロースはやってくるのよ」と恋するときめきの素晴らしさを教えてくれる。それから何年も経って、今夜女の子だった女性のところにも「サンタクロース」がやってくる――っていう歌詞です。


 発表されたのは1980年。80年代っぽいワクワク感と能天気さを兼ね備え、聴く人を明るく楽しい気持ちにしてくれる曲で、わたしも好きなのですが、ちょっと気になるところが……。


 これって「おしゃれなおねえさん」のところへ「背の高いサンタクロース」がやってくるって歌詞でしょ。おしゃれできれいなおねえさんのところには、背が高くてカッコいい恋人が、まるでサンタクロースのようにプレゼント恋するときめきを抱えてやってくるって歌っているわけ。


 じゃあ、のところへは、だれがプレゼント恋するときめきを届けてくれるんだろう――って、わたしは考えてしまいます。背の低いサンタクロースがやってくるんでしょうか。それともだれもやってこないのかも。


『恋人がサンタクロース』はとても楽しい歌ですが、ここに歌われていない人に感情移入して聴いちゃいます。そして、「おしゃれじゃないおねえさん」や「背の低いおにいさん」のところにも素敵なサンタクロースがやってきてほしいと願わずにいられません。かつてのわたしがだったから。


 この歌詞がとてもよく書けていると思うのは、これを書いた松任谷由実さんは、わたしの違和感に自覚的で、ことさら「おしゃれなおねえさん」や「背の高いサンタクロース」という言葉を選んでいるから。サンタクロースが運んでくる素敵な恋愛って一部の恋愛エリートが弄ぶゲームのようなものだと分かっているから。最高だな、ユーミン(笑)




 今夜はクリスマス・イブです。

 あなたのところにも素敵なプレゼントを抱えたサンタクロースが訪れますように!

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