月のいざない
数十分後、カグヤは橋の上で歩みを止め、自身を優しく照らしている光に体を向けた。
そして、黄色く強く輝き、夜空に浮かんでいる円に向かって苦しそうな表情を作りながら手を伸ばし、
(あぁ……お月様。どうか、どうかわたしのことをお救いください。お願いします)
すると、生気の抜けた目をしたカグヤのフォンダントから軽い電子音が一瞬鳴り響いた。
カグヤは我に返ったように体を一瞬小さく震わせ、すぐに胸元にぶら下げているフォンダントに触れる。
それから、フォンダントから放たれる光がカグヤの眼前に長方形の映像を作り出す。
そして、カグヤはその長方形を優しく操作していき、画面に文章を表示させていった。
ハルナ:『カグヤ、寄り道のしすぎもダメよ? 彼女とちゃんとまっすぐ帰ってきなさいね! あ、今日はイチゴのケーキ買ってきてあるよー。早く一緒に食べよー』
カグヤは送られてきたメッセージを読み続け、両目の端から一滴の
そして、頬に水が流れた跡を残して小さく微笑みながら、
「ふふっ」
カグヤは優しいまなざしを画面から月に移し、小首をかしげ、
(あれ? わたしはいったい何を? どうしてただの月に強い想いを抱いていたの? うんっ!?)
しばらく無言で満月を凝視し続ける。
それから、腕で目元を
(帰ろう)
カグヤは再び映像を操作し、画面に方角と地図、誘導線を表示させる。
そして、夜でも明るく輝き続ける町中にある、イルミネートウィズライトムーンに向かって歩みを進めていった。
親指を口に含みながら。
かぐや秘め ~カグヤヒメ~ !~よたみてい書 @kaitemitayo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます