2話目
遡ること高校の入学式後。
若干の緊張で張り詰めた身体には疲れが溜まり、且つ慣れない都会の帰り道に苦労していた。
電車初心者だった自分だったが、そもそも駅の場所すらあやふやだったので、校門前でずっと、スマホのマップ機能で経路を調べたり、電車の時間、乗り方とか検索なんかもしていた。
「……君、ずっとそこで何してんの?」
「ふぁい!?」
急に声を掛けられ、ちょっとビビりながら変な声で返事をする。
そのまま声のした方を見ると、相手もビックリしたのか、少し目を見開きながらこっちを見ていた。
「あ、えっと……ちょっと駅の場所とか分がんねがったんで、少しばり調べったっす……」
「………この町初めてなの?」
「いやー、入試の時に1回来ました」
「変わんないじゃん」
淡白な表情で会話をする目の前の女の子。
明るい髪の毛に整った顔立ちをしていた。
まさしく
「………ウチ、駅近いから案内しよっか?」
「!! ホントっすか!!是非お願いします!!!」
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「……で、ここの楽器屋右に行ったら左手に駅見えるから」
「本当にありがとうございます!!」
道中、見える街並みや主要な施設など、色々なモノを説明してくれたお陰で、退屈しない帰り道になった。
歩いている途中で、道行く人から度々視線を感じたが、恐らく自分では無くもう片方への物だろう。
そのくらい隣を歩いていたこの人は美人さんである。
「ところで、名前なんて言うんすか?」
「
「
「んー、そ。てか敬語やめない?タメっしょ君」
「え、えーと……
「呼び捨てでいーよ、ウチも今年から高校生」
なんでも知ってる風なカンジを醸し出していたからか、勝手に年上のイメージで見ていた。
地元だから分かるだけで多分そんなつもりは本人には無かったんだろうけど。
「じゃ、気をつけてね」
「あ、待って待って、明日お礼したいから何組か教えて」
「2組」
「隣なんだ!俺1組なんでよろしく!」
「ん」
早く帰りたいのか、
その日の自分は美人な人と一緒に下校出来た事に謎の優越感を感じて、興奮気味に帰宅したのだった。
ちなみにホーム内で迷って電車は乗り遅れた。
次の日、昼休みにお礼と称してお菓子を持っていった時から、自分は
ぶっちゃけ一目惚れしてた。
思春期なのだ。
チョロい生き物だった。
鼻の下しか伸びてない。
「え、
「ん、フルート吹いてたから」
「マジ!俺クラリネットなんだよね!」
入る部活も一緒だったので、接点が増えた事で余計にアプローチする様になった。
下心の化身だった。
思春期なのだ。
必死だった。
楽器の練習も恋愛も死に物狂いでやっていた。
それからなんやかんやで時が過ぎて、5月末の定期演奏会を終えた辺りで勢い余って告白してしまった。
「会った時からずっと好きです!!付き合って下さい!!」
「………やっぱそーだったんだ…」
んー なんて声を出しながら考えていたのか、少し間を置いて
「いいよ」
宇宙始まるくらい嬉しかった。
自分勝手に突っ走って、ガンガン進んで猛烈な勢いで好きアピールして、正直OK貰えるなんて思ってなかった。
しかし
「でも、ウチそーゆーのあんま分かんないから、今まで告白されたの全部振ってたし、それだけは覚えといて」
それからというものの、なんだか素っ気ない毎日だった。
話し掛けても空返事だし、部活の時もなんか避けられてる気がする。
一緒に帰ったのなんて馴れ初めの時だけだし、SNSだって pinsta も gain も交換してるけど、あんまり会話が無い。
てゆーか俺が一方的に送ってるだけみたいな感じになってる。
他の部員からも
「なんか付き合う前の方仲良かったんじゃない?」
なんて言われる始末。
自分が一番思っている。
そんなこんなで今に至ると言うわけであった。
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「で結局、
「んー、いつも通りだー」
今日だって話し掛けにいこうとしたが、何やら用事があるとかなんとかで避けられた。
でもこんな事でめげる俺では無い。
接点はいっぱいあるんだから、もっと絡みに行こう、失礼の無い範囲で。
そんな事を考えてる内に昼飯も食べ終わり、特にやる事もなかったのでスマホを取り出す。
「そんな話してねーでとりあえずマルチすっぺ」
「おー、やるかー」
「てか昨日出たキャラのスキルやばくね?」
「え、あいつ強いの?今朝10連で出たんだけど」
「やべ、アップデートまだだわ」
前に時間潰しの為に始めたゲーム、気がつけば4人で遊ぶようになっていた。
今日も今日とて攻略の為に、チャイムが鳴るまで通信プレイをするのだった。
クールな彼女がデレるまで 玲音 @rain_12345
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