第3話 淡雪の思い出
少女二人は雪の精に夢中で、女が静かにその場から消え去ったことに気づかない。その後の女の行方も知らない。
だが、女からの贈り物はこれから先ずっと忘れないだろう。
とある少女の母は、とある冬の日に唐突に雪のように白く冷たくなり、痩せさらばえて逝ってしまった。
女としては、気まぐれに人の子の魂を摘んでみただけのつもりだった。
しかし、母の亡骸を見て、その純朴な丸い目を見開くだけだった小さな少女の姿は、女にとって寒風が身体の内側を吹き抜けるような空虚感を与えた。
雪が降れば女は生まれる。人が持つ心の代わりに、冷酷な魂を宿して。
だが、小さな雪の妖精のような少女に、惹かれるように出会ってしまった。
この冬は。
雪の少女にとっては奇跡の冬で、女の魔法は絵本の童話にあるような贈り物だった。
だから、少女はすべてを知る必要はないのだろう。
そして女にとっては、人を冷たく寂しいものにしてしまうだけの自分に別れを告げた冬だった。
何が女にそうさせたのだろう。すべてを知る必要があるのだろうか。
女にとってこれは、童話のような、よく分からない出来事だったのだろうか。
ただこの冬は、極寒以外を知らない女の心に、雪解けが訪れた季節だった。
雪の魔法 ヤイ @1014JB
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます