少女は踊る暗い腹の中踊るを読んで

瀬戸の蝙蝠

高校2年生の夏、最後の読書感想文

 高2の宿題で読書感想文を書いたのが最後だと思う。大嫌いだったし、未だにそれは治ってない。

 感想というやつはどこまで内容に踏み込んでいいのかがわからないから。それでも俺は書いた。宿題というのはそういうものだ。

 課題を出されたときに、模範解答を探してしまうのが近道だったと思う。だが、こういう課題の正解を探そうとするほどの真面目さは持ち合わせていなかったし、どうにかなると漠然とした余裕があった。だから勢いで書き出してやらかした。

 少女は踊る暗い腹の中踊るを読んで。選書の理由は忘れた。とにかく、これで書いてやろうと書いた。背表紙に書いてあるあらすじ、本を手に取った時に見える部分まはネタバレではないとしてほぼ丸写しにした。文字数を稼いでいるうちに、なにか、自棄になったのだと思う。丸写ししていくうちに、手書きにした分だけ印字されたものよりも劣っているように見えて、やってることのばかばかしさに耐えられなくなって投げた。八つ当たりだった。

 詰まんないことをやらせるな、何で書かねばならんのか、真面目に読むやつはいない、枚数あるかどうか確認してそれで終わり、そもそも真面目に書く奴なんてこの学校にはいない、去年だって小学生の受賞作品を丸写ししたやつがいただろう。

 愚痴を書くのは楽しかった。原稿用紙4枚くらいは愚痴を書いて、最後適当に、小説のほうは面白かったので、こんな文章を読むよりも小説を読んでくれ、と締めた。

 当然怒られた。休み明けの授業で、名指しでこういうことはやるなと言われた。まあそういうもんだ。

 今ならやらないと思う。面白くない文章を、恨みつらみを読ませることの意味がどんなものか、わかってしまったから。それでも、思ってることを書いてしまうというのは有りだと思う。気持ちがいいし、楽しいから。書ききって吐き出して力が抜けたくらいの状態で、感想文を書くと案外いいものが書けるかもしれない。保証は出来ない。

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