第28話 キークエストとコボルトと

ボーダーフリーと呼ばれるランクのクエストを定期的にというか、ほぼ毎日こなすこと一月ほど。

そして毎日のように顔を合わすノーラさんから、あるクエストの紹介を受けた。


キークエストと呼ばれている、次のランクアップに直接的に関わるものだ。

Eランクへのステップアップには、群れをなす二足歩行をする犬型の魔物、コボルトの討伐を行うこととなる。

この場合、最低でも5体の討伐を必須とし、その期限は受注後2日以内とする内容だ。

討伐を行うのは馬だと約1時間の距離にある森の浅いエリア。


そんな場所に僕は足を踏み入れた。

毎日のクエストを行い、溜まったお金で身に纏う装備はある程度整えてある。基本的に魔法を用いて戦闘を行うが、近接戦もこなせるように最低限の装備はある。

どこかの要塞のような女の子と比べると貧弱な装備だが、無いよりかはマシだろう。


荷物は基本的に収納魔法がある為に、小ぶりのバッグを腰につけているだけだ。ポーションや、爆竹のような音の出るアイテムだったり、特に戦闘において速効性が売りのアイテムがバッグに入っている。


収納魔法に関してはそこそこの容量があるだろう。

未だ容量は満タンにならない。スペックはいずれ調べてみる必要があるかも。


今回は長引くことも予想して、ある程度の食料や簡易的な寝具なども入れてある。

初心者講習でお馴染みのマークさん直伝の野営グッズ一式は早々に手に入れている。


改めて今回立ち入る森を見つめる。

天気は快晴だが、薄暗く奥があまりみえない。

方向感覚の確認は怠らないようにコンパスを常に確認できるようにしている。


森の奥地には、高ランクの冒険者達が出入りすることもあって、パーティーを組んだ強靭そうな装備を纏う冒険者たちがチラホラといる。

道の駅のような施設があり、物売り達が冒険者相手に商売をしている。

アイテムの補給もある程度は大丈夫らしい。

まあ、街に戻るのは随分と距離があるからな・・・。


さて、事前にコボルトが頻繁に出てくるエリアはリサーチ済みなので、さっさとその場所まで移動しよう。

上手くいけば今日中に終えて帰ることができるかもしれない。

いつ襲撃があっても良いように馬から降りて森を進んでいく。



そうして歩くこと約30分。

事前に得た情報では、そのくらい歩けば目的のモンスターが出現するとのこと。

索敵能力に秀でているわけではないので、自分なりにより注意深く探索を行う。


コボルトは通常、最低でも2~3匹で行動するモンスターだ。少し臆病だが、群れをなすことで優位性を保ち、安全に獲物を狩るという。


なるほど、この鬱蒼と生い茂る森のなかにおいても、数は驚異だろう。

飛び道具なんてものがあればより一層。

コボルトに飛び道具を使う知識はさすがにないと聞くが。


ちなみに個の力は、ボーダーフリーのモンスターとさほど違いがない。

知性の面でランクが1つ上昇している。そんなモンスターだ。


ん?

遠くにコボルトらしき姿が確認できるな。

数は3匹。犬だし嗅覚が優れるモンスターなのだろう。既にこちらの存在には気付いていそうだ。

臭いを追ってきたのだろうが、不用心にこちらに近付いてきていて、隙だらけに見える。

Eランクモンスターには負けないほどの鍛錬を積んできたので、落ち着いて準備を始める。


よし、と一つ息を吐いた。


ここで放つのは光の矢。

矢を番えるように構えると、身体から溢れる魔力が弓と矢の形を形成し始めた。随分と練習をしたので、それなりに自信がある。

のそのそと近づいて来たコボルト達に攻撃の隙は与えない。


シュっという風切り音が鳴るとすぐに着弾した。時を置かずに直ぐに構える。

合わせて3回の動作で敵は沈黙した。

初めてのコボルト戦は、相手に攻撃の機会を与えずに勝利することができた。


警戒を怠らずにそのまま収納魔法に死体をぶち込む。

つくづく便利な魔法だと感じる。


あと2匹。

一連の作業を終えた僕は、改めて周囲の状況を確認し、次なる獲物を探し始めた。

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