第27話 初の報酬とプレゼントと
初クエストを無事に成功させた僕は今、お花屋さんにいる。
受付嬢であるノーラさんにオススメの花屋の情報を聞いてやってきたんだ。
ちなみに、人生初のギルドからの報酬は日本円に換算するとおおよそ5,000円くらいかな。
銀に光る硬貨を5つと銅貨を幾つか受け取った。
自分で稼ぐという感覚は、日本でアルバイト経験もある自分は知っている。
この場合、普段お世話になっている人にプレゼントを贈りたくなるのは前の世界特有のものかな?
まあ人生一度きりの機会だと思うし、自分のためだけに使うのではなく、ユリアナさん、メアリーさんにプレゼントを買おうと思い立った訳だ。
別に衣食住に困っているわけではないし、身に付けるものも考えたが、似合うとか似合わないとかを考えるとキリがなくなる。
ついでに値も張るだろう。
花ならばきっと二人とも喜んでくれるはずだ。
「あら、こんにちは」
店内には僕よりも少し年上に見える女性が上品に佇んでいた。
全体を大きめなロッドでゆるく巻いた、フレンチガーリーなセミロング。淡いピンクの髪色で、服装も相まってとても女性らしく可愛らしい雰囲気を纏っている。
「こんにちは」
前の世界では、お花屋さんに入ること自体が稀だった。
当然、異世界にやってきた僕に花の知識なんかもある訳もないので、適当に店員の人柄が良さそうなお花屋さんをチョイスしてもらった。
「初めましてですね、わたしはフランと言います」
少しおっとりとした口調で、品の良い笑みを浮かべたまま僕に話しかけてくれた。
「僕はカイです。冒険者ギルドのノーラさんにこちらのお店をご紹介いただきました」
「まあ、ノーラちゃんの!それは嬉しいわね!
それで、今日はどのような御用件かしら?」
ノーラさんの名前を出すとキラキラした目に変わり、仲の良さを伺わせる。
そういえば、「良いお花屋さんがありますよ!」と少し興奮気味に言っていたノーラさんを思い出した。仲よかったんだな。
「実は・・・」
手短に用件を伝えた。何というか、女性へのプレゼントを選ぶのは恥ずかしいな。
熱心にフランさんは、母であるユリアナさんやメアリーさんのことを聞いてくる。
「わかりました。それじゃあお二人にピッタリな花束をお作りしますね」
そう言ってお店の奥に消えていった。
数分でできるとのことなので、店内でそのまま待つことに。
それにしても今日は時間がとてもゆっくりと流れているように感じるな・・・。
店内には花々のいい香りが充満していて心が癒される。
遠巻きに楽器の音色が聴こえてきた。
近くには出店がチラホラと道沿いに出ており、カラフルな髪色をした子供たちが楽しそうに駆けていく。
舗装された石畳、道の真ん中を馬車が通り過ぎていく。
・・・改めてここは日本ではなく異世界なんだと再確認する。
せっかく異世界に来たのだから、この世界を満喫して幸せに過ごしたい。
その為にはもっともっと強くなってお金を稼がないとね。
徐々に出来上がっていく素敵な花束を見てそう思った。
「ありがとうございましたー」
フランさんお手製の花束を受け取り、帰路に着く。遠く離れるまで手を振り続けてくれていた。
少しのんびりとし過ぎたことで、陽が沈みそうになってきた。
まだ思うように扱えない馬に跨り、僕は屋敷へ急いだのだった。
喜んでくれるといいな、そんなことを思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます