第25話 奇妙なランチと予感と

・・・なんだこの状況は?



周りの冒険者たちはヒソヒソと僕たちのことを話している。

時折舌打ちが聞こえる。


待て、僕は悪くないだろ。


前を見る。

控えめに差し出されたスプーンには小さくカットされた肉料理が乗っけられていた。

少し恥ずかしそうに斜め下を見ながら、僕に料理を食べさせようとしてくれている?


思わず兄目線で見入ってしまったが、その山のように積みあげられた彼女の料理を食べたいと思われたのだろうか?


いわゆるあーんシチュであった。

頭の整理が追い付かないままに、差し出されたスプーンに乗った料理を頂戴する。


「おいしいです」

ご褒美的な展開に嬉しい気持ちもあるが公衆の面前で恥ずかしい気持ちが勝る。

味なんてわかるかよ。


「・・・」

スプーンと僕を交互に見つめるエヴィさん。

うん、間接キスだね。

危ない、童貞だったら好きになってたところだよ。


「あの、僕の分も食べてみますか?」

いや、冷静になれよ。

何てこと聞いてんだよ、僕は・・・


「いいの?」

キラリと輝いた瞳の光を見逃さない。


「はい、もちろんです」

僕の食事を同じようにスプーンで掬い、彼女に差し出す。

よろこんで頬張る、その不釣り合いにも見える要塞の様な彼女は小動物のように可愛らしかった。


――やはり妹のよう。

つい、前の世界での実の妹に姿を重ねてしまう。


ああ、僕は見た目的には16,7歳に見えるかもしれないが、心は二十歳を過ぎているからね。

嬉しそうに料理を食べる姿にすごく癒される。


しかしまあ、周りの空気は最悪だ。

日本人の心が抜けないからか、周りの目線が気になる。


「おいしかった、ご馳走さま」


僕もなんだかんだゆっくり食べていたので、後から食べ始めたエヴィさんと同じタイミングでご飯を平らげたのだった。

胃の痛い食事だったが、美人との食事はいいものだった。


「じゃあ、私はクエストに行くから」

そう言ってまたうるさくガシャンガシャンと音を鳴らしながら彼女は去っていった。

「また一緒にご飯でも」といって僕は見送る。


何となくまた会いそうだな、なんて思って。

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