第24話 初心者講習とお食事と
手続きも終わり、今は初心者向けの講習に参加している。
座学の為、小さめの教室で行われている。
主に心構えの部分が多いが、役立つ情報もかなりあって参加して良かった。
ちなみに参加していたのは僕よりもいくつか若そうな男の子が3人。
すでにパーティーを組んでいるとかで、特にお互いに干渉することもなく講習は終わる。
冒険に役立つショップを紹介してもらったり、手続きの進め方・報酬の受け取り方など一連の流れを教わった。
ちなみに、教官はマークさん。人のよさそうなイケてるおじさんといった人。
週に3回ほど、同じように初心者向けの講習を行ったりしているそうだ。
講習がない日もギルドに居て、その人柄で主に初心者から指導をお願いされたりしている。
嘱託職員といったイメージに近いか。
マークさんは過去のクエストで目をやられたようで現役を引退。人柄の良さ、面倒見の良さで指導員を引き受けるようになったみたい。
これはお団子ヘアーが可愛らしいギルド職員のノーラさんから教えてもらった。
彼女も面倒見が良いのか、一人でいる僕に多く話をしてくれた。
講義が終わり、ちょうどお昼の時間帯となった。
併設したギルドの飲食施設は多くの人で賑わっている。エプロンを着た女性スタッフが先ほどから慌ただしくしている。
僕もカウンターでご飯を注文し、奥の方の席についた。
割とすぐに料理が届いた。
それからすぐに満席になったようで、早めに頼んでおいて良かったと安堵していると、奥からガシャンガシャンと小うるさい音が迫ってきた。
その音は僕のすぐ近くで止む。
「ここ、いい?」
食事に夢中になっている僕は顔を上げると、そこには要塞が。
今朝も会ったがクエストをこなし、もう帰ってきたのか。
「・・・どうぞ、空いてますよ」
そのインパクトに驚きながら、何とか言葉を捻り出すことができた。
席は他に空いているところがなく、仕方なく相席することになったみたい。
「ありがとう」
そう言ってガシャガシャさせながら椅子に腰掛けた。
相変わらずのフル装備だ。
彼女はおもむろに兜を脱ぎ始める。
そりゃあ顔面を全て覆う装備で食事は取れないもんな。
「ふう・・・」
「えっ」
驚いた。
その声と背丈から女性だとは思っていたが、想像を遥かに超えるとびきりの美少女だった。
トーン暗めのアッシュグレージュ。
スモーキーな色味がボブウルフの髪型に合っている。寒色系のカラーはクールな印象を抱かせる。
髪をかき上げるしぐさがとても様になっていた。
「・・・なに?」
相変わらず無機質な声でジロジロと見つめる僕を咎めるかのように問いかけた。
「いえ、ジロジロとみてすいませんでした。
すごく綺麗なお顔をされていたのでつい・・・」
一瞬目を見開いた彼女であったが、すぐに無の表情に戻った。
「私の顔には傷がある。だからあまり見ないで欲しい。」
突き放すような言葉だ。
下を向いた彼女は、他人を拒絶するような雰囲気を纏っている。
よく見ると頬の辺りに大きな傷があった。
「無神経にすいませんでした」
「・・・」
気まずい空間が生じる。
気にしていなかったが、辺りの冒険者たちはチラチラとこちらを見ていた。
「あの坊主も勇気あるな、あんな無愛想なやつに話しかけてよ」とか、「正気かよ」なんて声が聞こえる。
彼女にも聞こえているはずだが、一切の音を遮断しているかのように無を貫いている。
「あの、お名前は?僕はミナガワと言います」
あまりコミュニケーションは得意には見えないが、見目麗しい女の子と食事を共にするのだ、最低限のコミュニケーションは取りたいもの。
性というものか。
「・・・エヴィ」
「ありがとうございます。エヴィさんですね。
僕は今日、冒険者となりましたのでよろしくお願いします、先輩。
色々と教えていただければ助かります」
「んっ」
そう言った運ばれてきた食事に手をつけ始めたエヴィ先輩。
小柄な身体のどこに入るのか、僕のスペースまで侵入してきた大皿たちに詰め込まれた料理を一心に食べ始めた。
昔からたくさんの料理を食べる女の子が好きな僕は、その豪快さについつい見入ってしまう。
前の世界では妹がそうだった。
少し歳の離れた妹は、とても愛くるしかった。
僕なんかよりもいっぱい食べていて、ついつい甘やかしてしまったものだ。
会いたい、なんてもう叶わないことだと考え直し、僕も食事を再開した。
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