第23話 ギルドカードとボーダーフリーと
「おはようございます、少しよろしいでしょうか」
カウンターに座る、ギルド職員に話しかけた。
「おはようございます!はい、もちろん大丈夫ですよ」
ニコりと口元に笑みを浮かべた20歳くらいのメガネの女性だ。
制服は崩すことなくピッシリと着こなしている。つい目線が胸に集中してしまいそうな程凶悪なラインは、なるべく目線を避けたつもり。
丸の形をしたメガネ、こげ茶色をした髪色で、頭の上にはお団子をのせている。
纏うふんわりとした雰囲気につい和んでしまいそうになる。
「僕はミナガワといいます。今日は登録の為に来ました。」
「あ、マスターから聞いてますよ!
書類を用意しますので少しお待ちくださいねー」
慌てることなく書類をさばく姿に優秀さを感じる。
僕はといえば流れるように書類を用意するスタッフの仕事ぶりをボケッと眺めている。
そういえば登録名はミナガワとしている。
今後外にでる時にはカイ・ローゼンダールの名は一切使わないものとする。
ああ、ミナガワは前の世界での名字である。
ルーツを忘れないようにね。それは必要なことだと思っている。
「あ、ミナガワさん用意できましたよ!
まずこちらがギルドカードです。
一度こちらに触れていただければ…
はーい、登録が完了しましたので大丈夫です。」
ギルドのエンブレムが描かれている部分に手を触れると僅かな時間小さな光を発し、収束した。
まとめるとこうだ。
ギルドの手続きは基本的に手ぶらでOK。
各受付にはタブレット端末のようなものが卓上に置かれており、それにはギルドのエンブレムが描かれている。
手続きはエンブレムに触れることでタブレットに冒険者のランクなどの情報が表示される仕組みになっていて、履歴などを一覧で表示することも可能だという。
各種手続きにはそれを用いて行われるようだ。
文化的にそれほど先進的なイメージは無かったが、魔力を識別的に使用する発想は素晴らしいと思ったし、未だ見ぬ魔法士ギルドへの興味が沸いた。
さて、登録としてはあっさりと終わった。
ギルドカードに登録される情報としては、魔法の適性検査も含まれるが、ほとんどがギルドカードへの登録時に自動的に登録されていた。
ここに冒険者ミナガワの誕生である。
ついにひとつの目標であったギルドへの登録が完了し、冒険者として羽ばたくことができる。
実際の活動としてはまだまだ初心者なので、低難度のクエストの消化を行い、実績を積むことでステップアップとなる。
ちなみにランクはFである。ボーダーフリーだってさ。
つい前の世界のことを思い返してしまったよ。
僕も大学生だったんだ。
分かりやすい。特別な力や教養も必要ない、誰でもなろうと思えばなれる。そんなランクだ。
一刻も早く抜け出したい、そんな思いである。
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