第20話 ギルド登録と同伴者と

約半年前にこの世界にやってきて、明日はようやくギルドでの登録を行うことができる。


自分が出来ることは目一杯やったはずだが、直前になって少し弱腰になってしまっていた。

今の自分がしっかりとこなせるのだろうか・・・。

どうしてもそんなことを考えてしまう。

不安と期待が入り混じり、なかなか寝付けない。前の世界の受験や面接の前夜と同じような思いを抱いている。

何気なく読み終えた本をぼんやりと眺めながら、ペラペラとページを捲る。頭にあまり情報が入っていない気もするが、少し気がまぎれてきた。


普段よりも遅くまで起きていると、メアリーさんが気を遣って紅茶を淹れて持ってきてくれた。

申し訳ないと思いつつもそれを受け取り一息ついた。

品のあるハーブの香りが部屋に漂い、リラックス効果を感じる。


「大丈夫、僕は出来ることをこなしてきたはず」自分に言い聞かせながら、無理やり目を閉じた。



翌朝、僕は少し早く目を覚ました。

メアリーさんが呼びに来る前に身の回りを整えた。

にっこりと微笑みながら僕を起こしに来たメアリーさんは、僕の準備万端な姿を見て少し不満気な表情を浮かべた。

彼女は隙あらば僕の面倒を見たがるような気がしているな・・・。

何とかなだめながら、一緒に朝食に向かった。


食事はメアリーさんと二人きりだった。後の予定があるとのことで、ユリアナさんは最後まで現れなかった。


そうして、ギルドへ向かう準備をしているとユリアナさんが姿を現した。

すっかりと血色の良くなった顔色、よく手入れされた黒髪は天使の輪がくっきりと見えている。優美な雰囲気で大人の魅力が溢れんばかりだ。


「おはようございます。今日はギルド登録の日ですね。準備はできていますか?」とユリアナさんが声をかけてくれた。


僕は彼女の言葉に安心したように頷いた。

「大丈夫です。しっかりと準備しましたから」と答えると、ユリアナさんも微笑んでくれた。


「それでは、早速出発しましょう」とユリアナさんが言って、僕たち三人はギルドに向かった。

でもまさか、保護者同伴でギルドに赴くことになろうとは・・・。



移動は馬車である。

メアリーさんが操縦を行う。

乗り心地は何とも言えないが、2,30分程度の移動時間は緊張しっぱなしだったのであまり気にならなかった。


到着したギルドの建物は大きくて立派なものだった。入り口には大きくてすこし武骨な看板が掲げられている。


「ここがギルドですね。緊張してきました」と言うと、ユリアナさんが肩を叩いて励ましてくれた。


「大丈夫ですよ。なにも心配することはありません」と彼女が言って、僕たちは一緒にギルドに入っていった。


ギルド内は朝早くだというのに活気に満ちている。冒険者たちが様々な依頼を受けて、準備をしている様子が見られる。


部屋の奥まで続く長いカウンターには多くのスタッフが慌ただしく、手続きだろうか、作業をしている。

僕たちは一番手前のスタッフに声を掛け、要件を伝えた。

その後少しの間待っていると、奥の部屋から大きな身体の筋骨隆々の強面の男がこちらに向かって歩いてきた。

その巨躯を小さく丸め、ユリアナさんにお辞儀をする。


「ユリアナ様、お待ちしておりました。

奥の部屋を押さえておりますので、こちらにどうぞ。お連れ様も付いてきてください。」

見た目で人を判断してはいけないが、その外見から想像も出来ないほど紳士的に僕たちを誘導した。


僕たちは前を歩く大男に従って、奥に進んでいく。

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