第19話 訓練と訓練と訓練と…
…何が薔薇色の人生だ。
と、つい先日思い立った日に願った栄光の日々は、想像を絶するほどのハードな訓練で以てしてぶち壊された。
連日、代わる代わる二人の師が僕を鍛え上げる。
今、目の前ではメアリーさんが穏やかな笑みを浮かべて幾つもの魔法を宙に浮かべている。
「いきますよぼっちゃま!」
そう言って、まるで空に花が咲き乱れたかのような球体を維持した魔法を僕に向かって続けざまに放った。
僕はというと、足を動かすことで適切な距離を保ちつつ、飛んできた魔法の同等の威力を込めた反する属性を以て消し飛ばしている。
1発、2発、3発。
確実に魔法を消し去っていく。
火には水を。
水には風を。
風には火を。
闇には光を。
また、光には闇を。
「素晴らしいです!」
答え合わせはまさに命がけだ。
飛ばされた魔法に込められた魔力はバラバラで、同等の相反する魔法かつ同等の魔力で消去ができるが、少しでも間違えると自分の体が吹き飛ばされることになった。
気を失っても直ぐに回復魔法が飛んできて、訓練の繰り返しとなる。
怪我なんて概念は、欠損でもしない限りは軽視されているのかもしれない。
だってすぐに治るもの。
何回これまでに気絶したのかわからない。
手足だってついているのかわからないほどに衝撃を受けたことがある。
まさに満身創痍で一日を終える日々も珍しくなく、始めたばかりはどちらかにベッドまで背負われていたものだ。
これがこの世の一般的な訓練方法であるのだろう。前の世界でぬくぬくと育った自分を恥じた。
これでもスポーツで心身を鍛えていた時期があったんだけどね。
何が楽しいのか、綺麗な顔をした二人が浮かべる笑顔はもはやホラーで、少しでも僕の力量が上がると嬉々として一気にレベルをつり上げたのだった。
こうして数ヵ月にも及ぶ鍛練で、冷静に対処をすることができるレベルにまでに至った。
平行して魔法の出力面も鍛え上げた。
攻撃や支援や防御の魔法を自在に操ること。
多くの属性魔法の威力・効果の確認と暗記はなかなか大変で、ひととおり覚えれば次は威力自体の向上を行う。
…出力を限界ギリギリまでをこなせば人は立つことさえままらないのだと、これも勉強になった。
もはや自然な流れで背負われて自室に戻る僕は、男として大事な尊厳を忘れてしまっていたのかもしれない。
どこか二人は嬉しそうに僕を背負っていたのだった。
こうして、ようやく自力で自室に帰ることが出来た頃、ユリアナさんから提案を受けた。
「明日、街のギルドで登録をしましょうか」
ワクワクする話だ。
訓練をこなすのに精一杯でつい忘れていた。
「はい!行きます!!」
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